住民訴訟を提訴しました―春日井市が令和6年度に花王株式会社から土地を買い戻した件
私、はらだよしひろが、個人的に思ったことを綴った日記です。社会問題・政治問題にも首を突っ込みますが、日常で思ったことも、書いていきたいと思います。
令和6年に春日井市が花王株式会社から土地を買い戻した件について、私が問題を提起していました。
それに対して、住民監査請求が退けられたので、住民訴訟を提起いたしました。
目次
住民訴訟の訴状
まず、住民訴訟の訴状を示します。
住民訴訟-訴状-(花王)※一部黒塗りこの住民訴訟の内容を詳しく説明します
今回は、私が提起した住民訴訟で何を問題にしているのか、その中身をできるだけわかりやすく整理して説明します。
この事件は、春日井市と花王株式会社との間で行われた土地の買戻しと、その際に行われた相殺処理に重大な違法があるのではないか、という点を問うものです。表面的には、ひとつの土地取引や契約処理の問題に見えるかもしれません。けれども、私が見ているのは、もっと大きな問題です。つまり、地方自治体が巨額の財産をどう扱うのか、そのときに議会の統制がどこまで及ぶのか、そして会計処理の透明性や法的な正当性が本当に確保されているのか、という問題です。
この事件は、単なる契約上のもめごとではありません。地方自治の根幹にかかわる話だと、私は考えています。
私がこの事件で求めていること
この事件で私が求めている内容は、大きく三つあります。
第一に、春日井市と花王との間で交わされた合意そのものが、地方自治法96条1項8号に違反していて無効であることを明らかにすることです。
第二に、その合意に基づいて行われた相殺処理、つまり買戻金から違約金や使用料相当額を差し引いた会計処理を取り消すことです。
第三に、差し引かれた金額について、春日井市が花王に対して返還を求めるための必要な措置を講ずるべきだ、という点を確認することです。
要するに、私は「最初の合意の仕方から、その後の会計処理まで含めて、全体が法的におかしいのだから、きちんと是正されるべきだ」と主張しているわけです。
この事件がどう進んできたのか
話の出発点は、春日井市と花王が平成30年2月22日に締結した大泉寺地区企業用地に関する土地売買仮契約です。これは当初、市議会の議決を経て進められたもので、土地引渡しから3年以内に物流センターを供用開始することが条件になっていました。その後、契約の変更があり、最終的には令和7年3月末までに供用開始することになっていました。
ところが、令和5年11月29日、花王は地政学リスクやインフレ、建設業界のいわゆる2024年問題などを理由に、期限までの供用開始が困難であると通知しました。これに対して春日井市は、令和6年1月12日、「やむを得ない事情」には当たらないとして再延長を認めず、違約金請求と買戻しの方針を示しました。
その後も花王は、令和6年3月29日に再延長や違約金減免を要望しましたが、市は4月11日にそれも認めませんでした。そして6月14日には、花王が建設中止を通達するに至ります。
さらに、令和6年8月21日には、市議会で約30億円の補正予算が承認されました。しかし、私が問題にしているのは、ここで承認されたのはあくまで予算上の枠であって、その後に実際に結ばれる具体的な内容まで議会が承認したわけではない、という点です。
そして、令和6年9月27日、市と花王は土地売買契約解除に関する合意を交わし、買戻金29億7354万2037円から、違約金9億8299万8611円と使用料相当額3億2929万5904円を差し引くという相殺処理を行いました。私が真正面から問題にしているのは、まさにこの部分です。
この事件の中心にある争点
この事件の争点は、私の見方では大きく五つあります。
一つ目は、議会の議決を経ていないという問題です。
二つ目は、花王側が主張した「やむを得ない事情」を市が不当に否定したのではないかという問題です。
三つ目は、違約金という債権そのものが本当に成立していたのか、またその金額が本当に確定していたのかという問題です。
四つ目は、相殺処理という会計のやり方自体に違法性があるのではないかという問題です。
五つ目は、こうした一連の処理が憲法29条の財産権保障にも反するのではないかという問題です。
つまりこの事件は、単に手続の問題だけではなく、契約解釈の問題でもあり、会計の問題でもあり、さらに憲法の問題でもあるのです。私は、この重なり合った構造こそがこの事件の本質だと見ています。
私が最も重視しているのは議会議決の欠缺です
この事件で、私が最も重視している論点は、やはり議会の議決を欠いているという点です。
地方自治法96条1項8号は、一定の重要な財産の取得や処分について、議会の議決を必要としています。そして春日井市の条例でも、予定価格2000万円以上の不動産の取得または処分、土地については5000平方メートル以上のものは議会議決が必要とされています。
今回の対象は、金額でいえば約29.7億円、面積でいえば83013.74平方メートルです。これだけ見ても、本来なら議会の議決が必要になる案件です。私はそう考えています。
ここで特に重要なのは、補正予算の議決と、個別具体的な財産処分に対する議決とは別物だということです。予算を通したからといって、その後の具体的な契約内容や相殺方式まで議会が承認したことにはなりません。予算はあくまで支出の枠を認めたにすぎず、何をどのような法的構成で処理するのかまで一体として議決したわけではないのです。
しかも、今回の合意そのものは議案として議会に提出されていません。私は、この点を非常に重く見ています。なぜなら、議会の統制を受けるべき巨大な財産処分が、実質的に議会を通さずに進められたことになるからです。
そして、この問題は単なる形式違反ではありません。もし議会にきちんと諮られていれば、その内容について修正や異論が出た可能性もある。減免のあり方、相殺の仕方、違約金の扱いなどについて、公開の場で議論された可能性がある。だからこそ私は、議決欠缺を実体的な違法だと捉えています。
憲法29条の財産権の問題として見たときの重大さ
私はこの問題を、地方自治法違反にとどまるものとは考えていません。憲法29条の財産権保障の問題としても見ています。
なぜかといえば、花王が本来受け取るはずだった買戻金から、法的に確定したとはいえない違約金や使用料相当額を差し引いているからです。もしその差引きに十分な法律上の根拠がなく、適正な手続もなく、しかも中身の合理性も乏しいのであれば、それは財産権に対する不当な制約だということになります。
私はこの点について、財産権制約の合憲性を考えるうえで、少なくとも四つの視点が必要だと考えています。すなわち、法律上の根拠があるのか、適正な手続が確保されているのか、目的と手段の合理性があるのか、そして補償や是正の実効性があるのか、という視点です。
本件では、議会議決がなく、違約金や使用料相当額の法的根拠にも強い疑問があり、その負担の内容にも合理性が疑わしく、しかも十分な補償や調整もありません。そうである以上、これは「公共の福祉による正当な制約」として簡単に片づけられるものではないと、私は考えています。
違約金は本当に成立していたのか
この事件では、違約金を当然に発生したものとして扱ってよいのかどうかも、大きな争点です。
私は、違約金というものは、単に「期限に間に合わなかった」というだけで自動的に確定するものではないと考えています。債務不履行があり、その責任が相手に帰せられ、しかも免責や猶予の余地がなく、さらに金額の算定根拠も具体的に明らかになって、初めて相殺に使えるだけの確定した債権になるはずです。
ところが、本件では、花王は政府の物流政策や建設業界の事情などを踏まえて延長や減免を求めていました。そうであれば、契約上の「やむを得ない事情」に当たる可能性をきちんと検討する必要があったはずです。それにもかかわらず、市は違約金が当然に発生することを前提に話を進めているように見えます。
また、約9.8億円という金額が、どういう計算過程で導かれたのかも極めて重要です。料率はどうなっているのか。基礎となる金額は何か。どの期間を対象にしたのか。減額や調整の余地はなかったのか。こうしたことが十分に裏付けられていないなら、その金額は未確定というべきです。
私はここで、「違約金があり得るかどうか」と「今回の相殺に使えるほど法的に確定しているかどうか」は別問題だと思っています。そして本件では、その確定性に重大な疑問があるのです。
相殺処理そのものがおかしいと私が考える理由
私はこの事件を、単なる民法上の相殺の問題として見ていません。地方自治体の財務会計として、この処理の仕方が適法なのかという観点から見ています。
地方公共団体の財務会計は、歳入と歳出をそれぞれ独立して把握することで、透明性と監査可能性を確保するというのが基本です。だからこそ、本来であれば支出は支出として、収入は収入として、きちんと別々に認識されるべきです。
ところが本件では、買戻金という支出から、違約金と使用料相当額という収入を差し引く形で処理されています。これでは、歳入と歳出の実態が見えにくくなり、議会や住民による監視も働きにくくなります。私は、この点を非常に深刻に見ています。
しかも、仮に形式上は調定や歳入処理がされていたとしても、その前提となる債権が実体法上不確かなものであれば、会計処理だけを整えても意味がありません。見た目だけを整えた「会計上の既成事実化」にすぎないおそれがあるからです。
この事件の本質は、「金額が妥当かどうか」だけではありません。「こういう処理の仕方を自治体がしてよいのか」という会計構造そのものが問われているのです。
使用料相当額にも独立した疑問がある
違約金だけではありません。使用料相当額3億2929万5904円についても、私は独立の問題があると考えています。
市側は、プロポーザル実施要領に書かれた算定式などを根拠にしているようですが、私は、それだけで法的拘束力のある金銭債務の根拠になるとは思っていません。公募段階の募集要項と、実際に相手方の財産から差し引くことのできる法的債権とは、同じではないからです。
さらに、本件土地では建物建築も供用もされておらず、現実の使用実態があったのかという点自体にも疑問があります。実体的にどのような使用があり、その対価として何をどこまで請求できるのかが曖昧なままであれば、やはりこれも相殺に使えるほど確定した債権とは言いにくいはずです。
金額の内訳、算定資料、内部決裁文書、固定資産税控除額の扱い、月数計算の根拠などが十分に明らかでなければ、この3億円超の差引きもまた、法的にきわめて不安定だと私は見ています。
監査結果に対して私が感じている問題
この事件は、住民監査請求を経たうえで提起しています。けれども、監査結果についても、私は大きな問題を感じています。
監査委員は、今回の違法性を積極的に認定せず、請求を棄却しました。しかし私から見ると、それは住民監査制度の実効性を弱めるものです。住民監査請求は、本来、自治体内部での是正の最後の機会ともいえる制度です。その段階で、実質的な検討が十分に尽くされないのであれば、制度の意味そのものが薄れてしまいます。
また、監査請求の段階で示した論点と、この訴訟で述べている法的主張とは、同じ財務会計行為を対象にしたものであり、後者は前者の補充・展開にすぎません。私は、その意味で監査前置との関係でも問題はないと考えています。
私がこの事件で本当に問いたいこと
全体として、この事件で私が問いたいのは、「巨額の土地買戻しと相殺処理が、議会議決を経ずに、法的に不安定な違約金や使用料相当額を前提として、しかも不透明な会計処理のもとで進められてよいのか」ということです。
これは、花王と春日井市のあいだだけの特殊な出来事ではありません。地方自治体が重要な財産処分をどう扱うのか、議会の統制をどこまで潜脱できるのか、未確定の債権を会計処理によって既成事実化してよいのか、そして住民はその違法をどう統制できるのか。そうした、住民訴訟の根本にかかわる問題が、この事件には詰まっていると私は思っています。
私は、この事件を通じて、単に一つの不当な処理を争うだけでなく、地方自治のあり方そのものに光を当てたいと思っています。議会を通すべきものは通す。会計は透明でなければならない。法的に不安定なものを、行政の内部処理だけで確定したかのように扱ってはならない。そうした当たり前の原則を、もう一度きちんと問い直す必要がある。その思いで、この事件に向き合っています。
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