お酒に酔うことを、憲法と法律から考えてみると面白い

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私、はらだよしひろが、個人的に思ったことを綴った日記です。社会問題・政治問題にも首を突っ込みますが、日常で思ったことも、書いていきたいと思います。

「酔う」って、すごく日常的な出来事です。家でゆっくり晩酌してふわっと気分がよくなる、友だちと飲んでテンションが上がる。そういう“酔い”そのものは、日本では基本的に「違法」ではありません。
でも一方で、飲酒運転や、未成年(20歳未満)の飲酒、公共の場での迷惑行為などには、はっきり法律の線が引かれています。今日はその線引きを、憲法(大きな設計図)と、具体的な法律(ルールブック)の両方から眺めてみます。


1. まず憲法:飲む自由は「どこから来る」の?

憲法には「お酒を飲む権利」と書いてあるわけではありません。けれど、飲む・飲まないを含む私生活上の選択は、主に次の条文の発想に支えられています。

  • 憲法13条(個人の尊重/幸福追求)
    ざっくり言うと、「個人として尊重され、自分の人生を自分で選ぶ」土台。飲酒も、基本はこの“私生活の自由”の一部として扱われます。
  • 憲法12条・13条(公共の福祉)
    自由は無制限ではなく、他人の権利や安全と衝突するとき、必要最小限の範囲で調整される――というブレーキ役。
  • 憲法25条(公衆衛生・福祉)
    国や自治体が、健康被害を減らしたり、若年者を守ったりする制度を整える方向性の根拠になり得ます。
  • 憲法31条(適正手続)
    罰金や身柄拘束など“罰”を科すなら、法律に基づき、定められた手続で、という大原則。

ここまでを一言で言うと、「飲む自由はある。だけど、危険や迷惑が他人に及ぶところから強く制限される」。この発想が、個別の法律に落とし込まれていきます。


2. 法律:どこで線引きされるのか(3つのゾーン)

飲酒と法律の関係は、体感的には次の3ゾーンで理解するとわかりやすいです。

  1. 私的ゾーン(家で静かに酔う等)
    → 原則、刑罰の対象ではない(13条的な私生活)。
  2. 公共ゾーン(路上・駅・イベント等)
    → 迷惑や危険が出ると、軽い罰・保護・退去要請などが入りうる。
  3. 高リスクゾーン(運転)
    → “他人の生命身体”に直結するので、最も強く禁止・処罰される。

以下、法律で具体的に見ていきます。


3. 20歳未満の飲酒:本人より「提供側」が重く見られがち

日本では、20歳未満の飲酒は禁止とされています。根拠は「二十歳未満ノ者ノ飲酒ノ禁止ニ関スル法律(いわゆる未成年者飲酒禁止法)」です。条文は歴史的経緯で旧かな遣いの表記が残っています。e-Gov 法令検索+1

ポイントは2つ。

  • 本人の飲酒を禁じる(健康面・成長への配慮という政策目的)e-Gov 法令検索+1
  • 営業者(店・販売者)に、販売・供与の禁止や年齢確認などの措置を求め、違反に罰則
    20歳未満と知りながら販売・提供した営業者は、50万円以下の罰金などの対象になり得ます。e-Gov 法令検索+1

憲法の見取り図で言えば、若年者の保護(25条的な公衆衛生の方向性)と、自由の調整(12条・13条)によって、年齢で線を引いているイメージです。なお、成年年齢が18歳でも、飲酒の線引きは20歳のまま運用されています(国税庁の周知資料でも20歳未満の飲酒防止が前提になっています)。国税庁+1


4. 飲酒運転:自由より安全が圧倒的に優先される典型

運転は、法律が最も厳しく介入する領域です。道路交通法は「酒気帯び運転等の禁止」を置き(第65条)、酒気を帯びて車両等を運転してはならないとしています。e-Gov 法令検索+1

さらに実務上は、呼気中アルコール濃度の基準(0.15mg/L以上など)に応じて行政処分(点数・免停等)や刑事罰が整理されていて、警視庁の解説でも明示されています。警視庁+1

ここは憲法的にはとても分かりやすくて、**「他人の生命・身体の安全」**という強い公共目的があるため、私生活の自由(13条)よりも、公共の福祉(12条・13条)側の要請が前面に出ます。


5. 公共の場での“酩酊トラブル”:処罰だけじゃなく「保護」もある

酔って大声で騒ぐ、絡む、倒れて動けない――こうした場面では、次のような法の出番があります。

  • 「酒に酔つて公衆に迷惑をかける行為の防止等に関する法律」
    公衆に迷惑をかける行為への対応や、必要に応じた保護の仕組みが定められています。e-Gov 法令検索+1
    また、保護は無制限ではなく、引き取りがない場合でも24時間を超えない範囲で必要な限度といった歯止めが置かれています。衆議院
  • 警察官職務執行法3条(保護)
    異常な挙動などから合理的に判断でき、応急の救護が必要な場合の保護が規定されています。e-Gov 法令検索+1
  • 軽犯罪法
    公共の場所で多数の人に対して著しく粗野・乱暴な言動で迷惑をかける行為などが列挙されています。e-Gov 法令検索+1

ここで大事なのは、法律の目的が「罰すること」だけではなく、本人の安全確保(救護)と周囲の平穏の回復にある場面があること。とはいえ、介入が強くなるほど憲法31条(適正手続)の発想が重要になり、「必要な限度」「時間の上限」「根拠条文」といった歯止めが問われます。


6. 路上飲酒の条例:場所と時間で調整する“公共の福祉”の技法

「飲むこと自体は合法なのに、路上飲酒が規制されるの?」と驚く人もいます。これはまさに、憲法の“調整装置”である公共の福祉を、自治体が場所・時間・エリアといった形で具体化する例です。

たとえば渋谷区では、渋谷駅周辺地域の条例を改正し、一定エリアで午後6時から翌朝5時の路上等での飲酒を通年で禁止する旨を公表しています(令和6年10月1日施行)。渋谷区役所

憲法的に見ると、ポイントは「全面禁止」ではなく、目的(安全・環境)に対して、手段(時間・場所の限定)が必要最小限かというバランスです。ここに“比例”や“合理性”の感覚が入ってきます。


7. お酒を「売る」自由も、憲法と法律で調整されている

飲む側だけでなく、売る側にも憲法の話があります。酒類の製造・販売は、課税(酒税)や免許制度と結びつきやすく、酒税法などで「酒類」の定義や制度設計が置かれています。e-Gov 法令検索
これは、職業活動の自由(憲法22条の発想)と、公共目的(課税の公平・未成年飲酒防止・流通管理など)をどう調整するか、という統治の問題でもあります。


8. まとめ:酔いは自由、でも「越えてはいけない境界」がある

最後に、今日の話を一文にまとめます。

  • 成人が私的に酔うことは、原則として13条的な私生活の自由の射程。
  • しかし、**未成年保護(25条的方向性)/公共の平穏(12・13条)/安全(特に運転)**が絡むと、法律は具体的に線を引く。
  • その線引きが強くなるほど、**根拠法と適正手続(31条)**が重要になる。

お酒は文化でもあり嗜好品でもある一方、境界を越えると一気に“法の話”になります。自分の自由を守るためにも、他人の安全と平穏を壊さないためにも、「どこで法律が動くか」を知っておくのはけっこう実用的です。


参考(根拠資料)

渋谷区:渋谷駅周辺地域の安全で安心な環境の確保に関する条例の一部改正(令和6年10月施行)渋谷区役所

二十歳未満ノ者ノ飲酒ノ禁止ニ関スル法律(e-Gov)e-Gov 法令検索

国税庁:20歳未満の者の飲酒防止の推進国税庁+1

道路交通法(e-Gov)/飲酒運転の罰則等(警視庁)e-Gov 法令検索+2警視庁+2

酒に酔つて公衆に迷惑をかける行為の防止等に関する法律(e-Gov)e-Gov 法令検索+1

警察官職務執行法(e-Gov)e-Gov 法令検索

軽犯罪法(e-Gov)e-Gov 法令検索

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