たばこ税と日本国憲法――「値段の中の税金」は何を支え、どこで縛られるのか

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私、はらだよしひろが、個人的に思ったことを綴った日記です。社会問題・政治問題にも首を突っ込みますが、日常で思ったことも、書いていきたいと思います。

コンビニでたばこを買うと、値段はそれなりに高い。けれどレシートを見ても「たばこ税:○円」とは出てこないことが多い。実は、たばこ税は商品価格に“織り込まれている”間接税として設計されていて、法律上は製造者や輸入者などが納める形をとりつつ、最終的には購入者が負担しやすい仕組みになっています。東京都の「都たばこ税の手引」でも、たばこ税(都・区市町村・国税など)が価格に含まれる旨が説明されています。

この記事では、たばこ税を「賛成・反対」で語るのではなく、日本国憲法のどの条項が、たばこ税の“根拠”や“限界”になっているのかを、整理します。

1. そもそも「たばこ税」って一つの税なの?

日常会話で「たばこ税」と言うと一つに聞こえますが、実務的にはいくつかの税が重なっています。代表的なのは次の3つです。

  • 国たばこ税:たばこ税法にもとづく国税 e-Gov 法令検索
  • 地方たばこ税(都道府県・市町村):地方税法にもとづく地方税(条例で具体化される部分もあります) e-Gov 法令検索+1
  • たばこ特別税:特別の法律に基づく国税(のちほど「使いみち」と関係します) e-Gov 法令検索+1

財務省の統計・資料でも「たばこ税等」として税収が整理され、国の予算における位置づけが示されています。 財務省+1


2. 憲法で最初に押さえるのは「84条」:税金は“法律で”決める

たばこ税と憲法の関係で、いちばん土台になるのが 憲法84条(租税法律主義) です。要するに、

新しい税を作る/税率を変える/取り方を変えるなら、法律(または法律の定める条件)によらなければならない

というルール。国税庁の解説資料も、84条を「租税法律主義」として説明し、あわせて憲法30条(納税の義務)にも触れています。 国税庁

ここから何が言えるかというと――
たばこ税が「ある」こと自体は、好き嫌い以前に、国会で議決された法律(たばこ税法など)に基づいている限り、憲法の形式的要請を満たす、ということです。 e-Gov 法令検索+1


3. 次に重要なのは「83条・85条」:集めたお金をどう使うかは国会が統制する

税は“取る”だけで終わりません。「何に使うの?」が必ず話題になる。ここで出てくるのが、

  • 83条(財政民主主義):国の財政処理権限は国会の議決に基づく
  • 85条(国費支出・国の債務負担の国会統制):国が支出したり債務を負担するには国会の議決が必要

という、財政の大原則です。衆議院の憲法調査関係資料でも、83条の趣旨を「財政民主主義」の原則として整理しています。 衆議院

国たばこ税は「一般会計」に入る(=使いみちは基本“特定されない”)

たばこ税は、国の予算資料の中で他の税目と並び、一般会計歳入として計上されています。令和7年度(2025年度)一般会計予算の構成でも「たばこ税」が税収の一項目として示されています。 財務省

つまり、国たばこ税については原則として
「この税収は必ず医療費に使う」などの“ひも付き”ではなく、予算全体の中で国会が配分を決める、という理解が基本になります(それが83条・85条の統制の枠組み)。


4. 例外っぽい存在:「たばこ特別税」は“入る先”が法律でかなり決まっている

一方で、“用途が特定っぽい”税もあります。それが たばこ特別税

この税は、法律上、**「各年度の収入は国債整理基金特別会計の歳入に組み入れる」**と明記されています。 e-Gov 法令検索+1
さらに財務省の資料では、たばこ特別税が、国鉄清算事業団の長期債務や国有林野事業の累積債務の承継に伴う負担への対応として創設され、その税収が国債整理基金特別会計に組み入れられ、元利払い等に充てられる趣旨が説明されています。 財務省+1

ここでの憲法とのつながりは2つです。

  1. 84条:そもそも“そういう税を作る”こと自体が法律でないとダメ
  2. 83条・85条:特別会計に入れる設計も含め、財政の仕組みは国会統制の枠内で作られる

「目的税か一般税か?」の議論で言えば、たばこ特別税は少なくとも**“入る器(特別会計)が定められ、結果として用途が絞られやすい”**という点で、一般会計の国たばこ税より“ひも付き”に近い性格を持ちます。 e-Gov 法令検索+1


5. 生存権(25条)との関係:たばこ税は「公衆衛生政策」と交差する

ここからが本題の一つ。たばこ税と生存権の関係です。

憲法25条は、

  • 1項で「健康で文化的な最低限度の生活」
  • 2項で国に「社会福祉・社会保障・公衆衛生の向上及び増進」に努める義務
    を定めています。厚労省資料でも、25条2項の「公衆衛生」まで含めて条文が示されています。 厚生労働省+1

① 25条2項(公衆衛生)との接点:価格・課税は「需要を減らす政策手段」

たばこ税は「財源」だけでなく、**価格を通じて喫煙を減らす(特に若年層の開始を抑える)**という公衆衛生政策のツールとして語られます。WHOのたばこ規制枠組条約(FCTC)でも、**価格・課税措置(税・価格政策)**が需要削減の手段として位置づけられ、各国に実施の指針が示されています。 タバコ規制枠組条約+1

この意味で、たばこ税は
「25条2項が要請する公衆衛生の向上」を具体化する政策手段の一つ
として説明できます(ただし、25条だけで“税率はこうでなければ違憲”と直結するわけではありません)。

② 25条1項(最低限度の生活)との接点:逆進性・家計負担という論点

たばこ税は、買う量が同じなら支払額も同じになりやすく、所得が低いほど家計に占める負担割合が大きくなる(いわゆる逆進性)が問題として語られます。研究・政策論文でもこの点は繰り返し論じられています。 ISFJ日本政策学生会議

ここで25条が出てくるのは、「最低限度の生活」との緊張関係です。とはいえ、最高裁は25条について、国の政策・立法により具体化される側面が強い(いわゆる“プログラム規定”に近い理解)という文脈で語られてきました。社会保障史料の中でも、昭和23年9月29日大法廷判決への参照を含め、この整理が紹介されています。 日本心理支援センター+1

要するに、25条は「大事な憲法上の目標」でありつつ、税率の是非のような高度に政策的な領域では、国会・政府の裁量が相当幅広く認められやすい、というのが一般的な見取り図になります。


6. 平等(14条)・財産権(29条)との関係:税の“設計”はここで問われる

たばこ税が憲法問題になり得るのは、「税があること」よりも、むしろ**税の設計(区分・税率・例外)**の部分です。

  • 14条(平等):同じようなものを不合理に差別していないか
    例:紙巻と加熱式で課税の仕方が違う/銘柄や形態で負担が大きくズレる、など
  • 29条(財産権):税は財産に対する負担なので、立法裁量は広いとしても無制限ではない

現実の裁判では、税制は政策判断の要素が大きいので、違憲判断はハードルが高い傾向がありますが、理屈としては14条・29条が「歯止め」の条文になります(「何でもアリ」にならないための憲法上の手すり、というイメージ)。


7. 「税収はどれくらい?」という話が出ると、憲法上は何が見える?

国会資料では、たばこ税等の税収が国・地方あわせておおむね2兆円程度で推移している、国のたばこ税収は一般会計に組み入れられている、といった整理が示されています。 参議院

ここで憲法の観点から言えるのは、

  • 税収の規模が大きいほど「国民負担」としての意味も大きい(=84条の厳格な法定が重要)
  • 使いみちは、原則として予算を通じた国会統制(83条・85条)の話になる
  • 公衆衛生の観点(25条2項)からは、税率や制度設計が健康政策としてどう機能しているかが問われる
    という、“問いの立て方”が見えてくる、ということです。

まとめ:たばこ税を憲法の条文にマッピングするとこうなる

最後に、今日の話を「条文ごとの役割」にまとめます。

14条・29条(平等/財産権):税の設計が不合理な差別や過度の負担にならないかの“チェック条文”

84条(租税法律主義):たばこ税は法律に基づいて課税されなければならない(根拠と限界の基本) 国税庁+1

30条(納税の義務):法律の定めるところで税を負担する(ただし84条とセットで“勝手に課税されない”保障でもある) 国税庁

83条・85条(財政民主主義/国会統制):税収の使いみちは原則として予算・議決を通じ国会が統制 衆議院+1

25条(生存権・公衆衛生):たばこ税は公衆衛生政策(需要抑制)と交差。逆進性など生活への影響も論点になり得る 厚生労働省+2タバコ規制枠組条約+2

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