春日井市長選の争点――5つの課題から見る、3人の候補予定者の「春日井のつくり方」
私、はらだよしひろが、個人的に思ったことを綴った日記です。社会問題・政治問題にも首を突っ込みますが、日常で思ったことも、書いていきたいと思います。

2026年5月24日に投票が行われる春日井市長選は、同日に春日井市議会議員補欠選挙も行われます。市長選は5月17日告示、5月24日投票であり、正式な候補者一覧や選挙公報は告示後に掲載される予定です。したがって本稿では、現時点で公表されている「立候補予定者」の経歴・政策・実績を前提に、春日井市民の目線から、この選挙の争点を考えてみたいと思います。
目次
春日井市長選の争点――問われているのは「次の春日井をどうつくるか」である
今回の春日井市長選の争点は、単に「誰が市長になるか」ではありません。
もちろん、市長という職は重要です。予算編成権を持ち、市役所組織を動かし、政策の優先順位を決める立場にあります。誰が市長になるかによって、市政の方向性は大きく変わります。
しかし、今回の選挙をそれだけで見ると、本質を見誤るように思います。より深く見れば、今回の市長選で問われているのは、春日井市を、これからの時代に合わせてどう作り直すのかという問題です。
春日井市は、名古屋近郊の住宅都市として発展してきました。交通の便がよく、住宅地が広がり、学校や公共施設が整備され、多くの市民が「暮らしやすいまち」として生活してきました。いわば、昭和から平成にかけての都市成長の流れの中で、春日井は大きくなってきたのです。
しかし、時代は変わりました。
人口減少、高齢化、公共施設の老朽化、学校のあり方、上下水道の更新、財政制約、災害リスク、公共交通の弱さ、孤立する高齢者や子ども、そして行政の透明性。これらの課題は、どれも一つひとつが重いものです。しかも、それぞれが別々に存在しているのではなく、互いに絡み合っています。
たとえば、高齢化の問題は、福祉だけの問題ではありません。高齢者が病院や買い物に行けるかどうかは、公共交通の問題でもあります。自宅で暮らし続けられるかどうかは、住宅政策や地域コミュニティの問題でもあります。災害時に避難できるかどうかは、防災と福祉が交差する問題です。
公共施設の老朽化も同じです。施設を修繕するにはお金が必要です。しかし財源には限りがあります。では、どの施設を残し、どの施設を統合し、どの施設を更新するのか。その判断は、単なる行政内部の事務ではなく、市民生活に直結する政治的判断です。
つまり、今回の春日井市長選は、個別の政策メニューを比べるだけでは足りません。候補者が掲げる政策の奥にある、春日井という都市をどう見ているのか、市民生活の何を優先するのか、行政をどこまで市民に開いていくのかを見なければなりません。
その意味で、春日井市の課題は、大きく5つに整理できると思います。
春日井市の5つの課題
1つ目は、高齢化しても暮らせる都市にすることです。
春日井市はこれまで、車を使えることを前提にした郊外型の暮らしやすさを持ってきました。しかし、高齢化が進めば、車を運転できない人、外出が難しくなる人、地域のつながりから孤立する人が増えていきます。そのときに、買い物、通院、行政手続、地域参加、見守りをどう支えるのか。これは、これからの春日井にとって避けられない課題です。
2つ目は、古くなった施設・学校・上下水道をどう更新するかです。
高度成長期から都市として発展してきた春日井には、多くの公共施設、学校、道路、上下水道があります。これらは市民生活を支える基盤ですが、同時に老朽化という問題を抱えています。更新には大きな費用がかかります。すべてを今まで通り維持することが難しくなる中で、何を残し、何を見直し、どこに投資するのかが問われます。
3つ目は、限られた財源で何を優先するかです。
市民の要望は多様です。子育て支援を充実してほしい。高齢者福祉を手厚くしてほしい。道路を整備してほしい。学校をきれいにしてほしい。公共交通を便利にしてほしい。防災を強化してほしい。どれも大切です。
しかし、財源は無限ではありません。だからこそ、市長には「何をやるか」だけでなく、「何を優先するか」を示す責任があります。耳触りのよい政策を並べるだけではなく、限られた予算をどこに振り向けるのか。その優先順位に、その候補者の市政観が表れます。
4つ目は、水害・水質・交通・孤立など、生活の安全をどう守るかです。
市民にとって、政治の基本は生活の安全です。災害が起きたときに命を守れるか。水道水を安心して飲めるか。高齢者や子どもが孤立しないか。移動手段を失った人が生活から取り残されないか。いじめやハラスメント、差別によって、誰かが地域や学校や職場から排除されないか。
「安全」とは、単に犯罪や災害だけを指すものではありません。水質、交通、福祉、教育、人間関係、情報公開まで含めて、市民が安心して暮らせる条件を整えることです。
5つ目は、市民が検証できる透明な市政に変えられるかです。
ここは、今回の選挙で特に重要な視点だと思います。どれほど立派な政策を掲げても、その意思決定過程が見えなければ、市民は市政を検証できません。なぜその事業を行うのか。なぜその契約を結ぶのか。なぜその支出が必要なのか。なぜその情報を公表するのか、あるいは公表しないのか。
市政は、市役所の内部だけで完結するものではありません。市民の税金を使い、市民の生活に影響を及ぼす以上、市民が後から検証できる形で動かなければなりません。公文書が残され、意思決定の過程が説明され、議会が監視し、市民が情報にアクセスできること。これがなければ、民主的な市政とは言えません。

この5つの課題を軸に見ると、3人の候補予定者の違いはかなりはっきりしてきます。
行政経験と現職としての実績を土台に、継続と実務で市政を進めようとする候補。
当事者性、IT、市民参加、多様性を軸に、市政のあり方そのものを更新しようとする候補。
交通、防災、土地利用、経済政策を通じて、都市構造そのものを大きく変えようとする候補。
それぞれが見ている春日井の姿は違います。重視する課題も違います。政策の組み立て方も違います。
だからこそ、市民は「誰が有名か」「誰が現職か」「誰の政策が耳触りよく聞こえるか」だけで判断するのではなく、5つの課題に対して、それぞれの候補がどのような答えを出そうとしているのかを見ていく必要があります。
今回の市長選は、春日井市を次の時代にどう引き渡すのかを決める選挙です。
春日井を、これまでの延長線上で安定的に進めるのか。
古い行政文化をアップデートし、市民参加型の市政に変えるのか。
交通・防災・土地利用から、都市の形そのものを作り直すのか。
その選択は、単なる候補者選びではありません。
春日井市民自身が、自分たちのまちの未来をどう考えるのかという選択なのです。
小嶋小百合氏――当事者性とIT感覚で「春日井アップデイト」を掲げる候補予定者
小嶋小百合氏は、4月末まで市議会議員でした。公式プロフィールでは、商店の子として生まれ、国立金沢大学工学部を卒業し、特種情報処理技術者試験に合格。株式会社ピーソフを設立してパソコン教室を経営し、2021年にはLGBTQ当事者団体「春日井虹色さぼてん」を設立、2023年に春日井市議会議員選挙に当選、2025年には春日井市初のレインボーパレードを実施したとされています。
小嶋氏の政策の中心には、「春日井アップデイト」という言葉があります。これは単なるスローガンではなく、古い市役所文化、古い意思決定、古い行政サービスを、IT・AI・市民参加・多様性の観点から更新しようという方向性に見えます。
小嶋さゆり氏の政策を春日井市の課題に照らすと?
1つ目の「高齢化しても暮らせる都市」に対して、小嶋氏は、孤立防止、つながりを生む仕組み、障がいのある人も一緒に活躍できる社会、電子投票の導入などを掲げています。特に電子投票については、文字を書くことが困難な高齢者や障がいのある人も投票しやすくなると説明しています。
ここで重要なのは、小嶋氏の高齢化対策は、単に介護や福祉の制度を増やすというより、社会参加から排除されやすい人をどう政治や地域に戻すかという発想に近いことです。LGBTQ当事者団体の設立やレインボーパレードの経験は、少数者、孤立者、声の届きにくい人を可視化する政治姿勢とつながっています。
2つ目の「施設・学校・上下水道の更新」については、公式サイト上では、石黒氏や水谷氏ほどインフラ更新そのものを前面に出しているわけではありません。ただし、既存公共施設の経費削減・収益化、ネーミングライツの活用、都市課題の研究拠点化、企業・大学・金融機関との連携を掲げています。 つまり、小嶋氏のインフラ政策は、施設をどう残すかというより、公共施設をどう活用し、どう収益化し、どう新しい価値に変えるかという方向です。
3つ目の「限られた財源」については、小嶋氏はかなり分かりやすい形で切り込んでいます。市長の年収を見直すこと、高級公用車を廃止すること、IT・AI導入で市役所業務を効率化すること、税収以外で稼ぐ市役所へ体質転換することを掲げています。
これは市民にとって分かりやすい改革です。ただし、ここで問われるのは、シンボリックな削減と、30万都市の財政全体の組み替えをどう接続するかです。市長給与や公用車の見直しは象徴的な意味を持ちますが、公共施設、上下水道、学校、福祉、交通の財源問題は、それだけでは解決しません。小嶋氏には、IT・AI・収益化・民間連携を、どこまで具体的な財政設計に落とし込めるかが問われます。
4つ目の「生活の安全」については、いじめ・ハラスメントをなくす条例、女性管理職比率の改善、インクルーシブ教育、障がい者参加、孤立防止が中心です。 水害や水質、交通インフラよりも、人間関係、差別、孤立、行政参加の安全に重心があると言えます。
5つ目の「透明な市政」については、小嶋氏のIT・AI導入、電子投票、市民参加の発想が関係してきます。市役所業務の効率化だけでなく、市民が情報にアクセスしやすい仕組み、行政の判断が見える仕組みまで踏み込めるなら、小嶋氏の「アップデイト」は大きな意味を持ちます。

小嶋氏を選ぶ意味は、春日井市政を、当事者性・多様性・IT・市民参加の側から更新する選択です。一方で、市民は、その理念がどこまで予算、条例、執行体制、インフラ更新に接続されるのかを見る必要があります。
石黒なおき氏――行政経験を土台に「継続と実務」で課題に向き合う候補予定者
石黒なおき氏は、現職の春日井市長です。青山学院大学経済学部を卒業し、名古屋市立大学大学院経済学研究科を修了。昭和62年に春日井市に奉職し、秘書課長、総務課長、産業部長、建設部長、企画政策部長を経て、令和4年5月に市長に就任しています。市役所の組織、予算、事業、議会対応、庁内調整を長く経験してきた候補です。
石黒氏の特徴は、政策が「行政の実務」と強く結びついていることです。自身の公式サイトでは、「人生100年時代」を掲げ、高齢者から子どもまで、すべての人が健康で元気に生活できる春日井市、安心して普通に暮らせる春日井市をつくる必要があると述べています。
石黒なおき氏の政策を春日井市の課題に照らすと?
1つ目の「高齢化しても暮らせる都市」という課題に対しては、石黒氏は健康寿命の延伸、高齢者の居場所づくり、外出支援、重層型支援体制などを掲げています。令和8年度市政方針でも、高齢者が社会とのつながりを保ち、住み慣れた地域で長く自立生活できるよう、フレイル対策や介護予防を進めるとしています。
2つ目の「古くなった施設・学校・上下水道の更新」については、現職市長として最も具体的に行政計画と接続しています。市政方針では、水道管の耐震化・老朽管更新、下水道施設の耐震化・耐水化、学校施設のリニューアル、市民会館の再整備検討、公共施設等マネジメント計画の改定、水道料金改定に向けた準備などが示されています。
3つ目の「限られた財源で何を優先するか」についても、石黒氏は現職として、扶助費・人件費・建設コスト増により財政状況が厳しいこと、選択と集中による予算配分が必要であることを明言しています。ここは石黒氏の強みでもあり、同時に審判対象でもあります。つまり、財政制約を知る実務型の市長として安定感はある一方で、その優先順位が本当に市民生活の側から決められているのかが問われます。
4つ目の「生活の安全」については、防災、消防救急、交通安全、公共交通、水質、環境などに広く政策を置いています。公式サイトでも、災害に強いまちづくり、備蓄・避難所整備、治水機能拡充、交通安全、消防力強化、防犯カメラ設置支援を掲げています。
5つ目の「透明な市政」については、ここが石黒氏にとって最大の評価ポイントになると思います。公式サイトでは、情報発信、広聴、DX、健全な財政運営、市民に分かりやすい市役所の組織改正を掲げています。 しかし現職である以上、市民は理念だけでなく、実際に意思決定過程がどこまで見える市政だったのかを検証する必要があります。PFAS、水道、契約、支出、開発、公共施設、交際費など、重要な判断について、市民が後から公文書で検証できる市政になっていたか。ここは、石黒市政4年間そのものが問われる部分です。

石黒氏を選ぶ意味は、行政経験と継続性を重視し、既存の市政を改善しながら前に進める選択です。ただし、市民目線からは、「安定」と「透明性」が両立しているかを厳しく見る必要があります。
透明性に疑義のある石黒市政
もっとも、石黒氏については、現職市長である以上、行政経験や継続性だけで評価することはできません。
むしろ、市民目線からは、この4年間の市政運営において、重要な意思決定がどこまで透明であったのか、十分な説明責任が果たされていたのかを検証する必要があります。
その点で、石黒市政には、いくつかの重大な透明性に係る疑義があります。
第一に、PFAS、すなわちPFOS・PFOAをめぐる水道水質問題です。
市民にとって、水道水の安全は生活の根幹に関わる問題です。単に検査数値が国の暫定目標値を下回っているかどうかだけでなく、いつ検査結果を把握したのか、どのような庁内判断があったのか、なぜその時点で公表したのか、あるいは公表しなかったのかという意思決定過程が極めて重要です。
水質検査の結果は、市民が安心して水を飲むための基礎情報です。したがって、市にとって都合のよい数値だけを示すのではなく、検査の経緯、再検査の理由、報告の流れ、公表判断の過程まで、市民が後から検証できる形で残され、説明されるべきです。
しかし、私は公文書開示請求を通じて、国の暫定基準値を超えた事実を市が公表していない事実を突き止めました。
ですから、PFAS問題は、石黒市政が「市民の知る権利」にどこまで向き合ってきたのかを問う象徴的な問題だと言えます。

第二に、大泉寺地区企業用地における、花王からの土地売買契約解除・相殺処理をめぐる問題です。
この点についても、私は公文書開示請求等をとおして明るみにしました。
この問題で最も重く見るべきなのは、単に「市に損害が生じたのか」「相殺額が妥当だったのか」という金額上の問題だけではありません。より根本的には、地方自治法が求める議会の議決を経るべき財産処理である30億相当の土地売買が、議会の正式な議決が行われないまま、実質的に処理が進められたのではないかという点です。
地方自治法には、以下の規定があります。
地方自治法第96条第1項第8号
普通地方公共団体の議会は、次に掲げる事件を議決しなければならない。八 前二号に定めるものを除くほか、その種類及び金額について政令で定める基準に従い条例で定める財産の取得又は処分をすること。
そして、春日井市の条例には、以下の定めがあります。
春日井市議会の議決に付すべき契約及び財産の取得又は処分に関する条例第3条
法第96条第1項第8号の規定により議会の議決に付さなければならない財産の取得又は処分は、予定価格2,000万円以上の不動産若しくは動産の買入れ若しくは売払い(土地については1件5,000平方メートル以上のものに係るものに限る。)又は不動産の信託の受益権の買入れ若しくは売払いとする。
地方自治法は、地方公共団体の重要な財産の取得・処分について、議会の議決を必要としています。これは、市長部局だけで重要な財産処理を決めてしまうことを防ぎ、市民の代表である議会を通じて、公金・公有財産の処理を民主的に統制するための仕組みです。つまり、議会の議決は単なる形式ではありません。市民の財産を守るための、地方自治における重要な歯止めです。
ところが、この件において、春日井市は、地方自治法に定める議会の議決を求めてもいないことが分かっています。
議会の議決を法で定めているということは、透明性の確保を義務付けているのです。しかし、実際はそうでない現実が、30億円相当の土地買戻しで起こっている。
この問題の本質は、単なる金額の多寡ではありません。
議会の議決とは、市長部局が行おうとしている重要な財産処理について、市民の代表である議会が公開の場で確認し、審議し、賛否を明らかにする手続です。つまり、議会の議決は単なる形式ではなく、市民の財産を守るための民主的な歯止めです。
本来であれば、土地売買契約をなぜ解除するのか、なぜその金額で買い戻すのか、違約金や使用料相当額はどのような根拠で算定されたのか、相殺処理は法的にどう整理されたのかが議会に示され、議員が質問し、市長部局が答弁し、その過程を市民が見ることができるはずです。
ところが、議会の正式な議決を経ないまま、30億円相当の土地買戻しに関わる処理が進められたのであれば、市民はその判断過程を見ることができません。予算の説明や事後報告があったとしても、地方自治法が求める「議会の議決」を代替できるわけではありません。
市長部局の内部で、誰が、どの段階で、議会の議決は不要だと判断したのか。なぜ地方自治法96条1項8号と春日井市条例3条の適用を受けないと整理したのか。その判断は公文書に残されているのか。
これらは、市民が当然に知るべき事項です。
市政の透明性とは、都合のよい結論だけを示すことではありません。どのような根拠で判断し、どのような手続を経て、誰が責任を持って決定したのかを、市民が後から検証できる状態にしておくことです。
その意味で、花王からの土地売買契約解除・相殺処理の問題は、「市役所の内側だけで決まる市政」になっていなかったかを問う、石黒市政の透明性に関わる重要な問題だと考えています。

第三に、市長交際費の使途をめぐる問題です。
市長交際費は、市長個人のお金ではなく、市民の税金です。したがって、その支出先や目的については、通常の支出以上に慎重な説明が求められます。
しかし、市長の交際費支出の部分をみると、「自民党愛知県支部連合会役員及び愛知県連所属国会議員と
愛知県市長会との意見交換会会費」の名目で令和5年から7年まで3年連続で公金から出費されていることが分かります。
「自民党愛知県支部連合会役員及び愛知県連所属国会議員と愛知県市長会との意見交換会会費」の名目で市長交際費から出費されていることが分かる春日井市ホームページのサイト
とりわけ、自民党関係の会合への出席に伴って交際費が支出されているのであれば、それが本当に市政運営上必要な公的支出だったのか、政党活動や政治的関係維持への支出と評価される余地はないのか、支出基準や審査手続に照らして適切だったのかが問われます。
日本国憲法第15条第2項は、以下のように定めています。
日本国憲法第15条第2項
すべて公務員は、全体の奉仕者であつて、一部の奉仕者ではない。
ここから求められるのは、市長の公務が、専ら市民全体に対する奉仕を旨とし、政治的偏向を排して運営されなければいけないことです。そのために、市長もふくめ個々の公務員が一党一派に偏することなく、厳かに中立の立場を堅持して、その職務の遂行にあたらなければいけません。このことは猿払事件の最高裁判決も明示していることであり、石黒市長も例外ではありません。
ここから浮き彫りになるのは、「自民党」が組織として関わる会合に公金を出していることが、憲法から言っても問題になるようなことにならないかということです。
もちろん、市長が国会議員や県内の政治関係者、あるいは他自治体の首長と意見交換を行うこと自体が、直ちに問題になるわけではありません。市政運営に必要な情報交換や要望活動、広域的な政策連携が必要となる場面は当然にあります。
しかし、問題は、そこに市民の税金である市長交際費を支出することが許されるのかという点です。
特に、この支出名目には、「自民党愛知県支部連合会役員及び愛知県連所属国会議員」と明記されています。これは、単なる国会議員や県関係者との一般的な行政上の会合というより、特定政党である自民党の組織関係者が明確に関与する会合であることを示しています。
そうであるならば、市民から見て当然に疑問が生じます。
なぜ、その会合に市長交際費を支出する必要があったのでしょうか。
その支出は、市民全体の利益のためのものだったのでしょうか。
それとも、特定政党との関係維持、政治的ネットワークの形成、あるいは政党関係者との懇親に近い性格を持つものだったのでしょうか。
憲法15条2項が「すべて公務員は、全体の奉仕者であつて、一部の奉仕者ではない」と定めている以上、市長の公務と公金支出は、市民全体に向けられたものでなければなりません。市長がどの政党の関係者と会うかという政治的行動の自由とは別に、そこに公金を支出する場合には、その支出が一党一派の利益に関わるものではなく、市民全体の利益に資するものであることが、より厳格に説明される必要があります。
したがって、この問題は、単に「交際費の金額が大きいか小さいか」という話ではありません。
問われているのは、特定政党が組織として関わる会合に、市民の税金を支出することについて、市長部局がどのような憲法上・地方自治上の検討を行ったのかという点です。
市長交際費の支出にあたって、春日井市は、この会合の性質をどのように把握していたのでしょうか。
「自民党愛知県支部連合会役員及び愛知県連所属国会議員」と明記された会合について、特定政党への便宜供与、政治的中立性、全体の奉仕者性との関係をどのように検討したのでしょうか。
支出基準上、どの項目に該当すると判断したのでしょうか。
その判断過程は、公文書として残されているのでしょうか。
ここで重要なのは、憲法違反が確定しているかどうかを軽々に断じることではありません。
むしろ、市民の側から見て、憲法15条2項の趣旨に照らして疑義を持ち得る支出である以上、その疑義を解消できるだけの説明と記録が、市側に求められるということです。
市政の透明性とは、単にホームページ上に支出先と金額を掲載することだけではありません。
なぜその支出が公的支出として認められるのか。
なぜ市民全体の利益に資すると判断したのか。
なぜ特定政党との関係性が問題にならないと判断したのか。
その判断過程を、市民が後から検証できるようにしておくことこそが、本当の意味での透明性です。
市長交際費は、市長の裁量で使える便利なお金ではありません。
市民から預かった税金です。
だからこそ、特定政党が組織として関わる会合に対して支出される場合には、通常の会合以上に、支出の必要性、公益性、政治的中立性、憲法15条2項との関係が厳しく問われるべきです。
この点について、石黒市政は、市民が納得できるだけの説明をしてきたのでしょうか。
単に「支出した」という事実を公表するだけでなく、なぜその支出が市民全体のための公的支出だと言えるのかを、十分に説明してきたのでしょうか。
特定政党が組織として関わる会合に公金を出すことについて、憲法上の疑義を含めて、市民が検証できるだけの透明性を確保してきたのでしょうか。
この点にこそ、石黒市長の掲げる「透明性」に対する大きな疑問が残ります。

市民から見た透明性――石黒市政に問われる説明責任
これらの問題に共通しているのは、個別の政策判断の是非だけではありません。
PFAS問題も、花王関連の財務処理も、市長交際費の支出も、それぞれ論点は異なります。しかし、市民から見たときに本当に重要なのは、市役所の内部で何が検討され、誰が判断し、どのような根拠で決定されたのかが、市民にも開かれているかという点です。
市政は、市役所の内部だけで完結するものではありません。
水道水の安全は、市民の命と健康に関わります。
巨額の財産処理は、市民の財産と税金に関わります。
市長交際費の支出は、公金の使い道と政治的中立性に関わります。
だからこそ、行政の側には、単に「適正に処理した」と説明するだけではなく、市民が後から検証できるように公文書を残し、意思決定過程を明らかにし、議会による監視を実質的に機能させる責任があります。
市民から見た透明性とは、結果だけを公表することではありません。
なぜそう判断したのか。
誰がその判断に関与したのか。
どの公文書にその経緯が残されているのか。
議会や市民が、その判断を後から検証できるのか。
ここまで開かれていて、初めて「透明な市政」と言えるのだと思います。
石黒氏を選ぶ意味は、行政経験と継続性を重視する選択です。
市役所組織を知り、行政実務を理解し、既存の市政を安定的に前へ進めるという点では、現職市長としての強みがあります。
しかし、その一方で、現職市長としての石黒市政には、透明性と説明責任をめぐる疑義が存在します。
したがって、市民が見るべきなのは、単に「経験があるか」「市政を安定的に運営できるか」だけではありません。
その経験と安定が、市民に開かれた市政につながっているのか。
不都合な情報も含めて、市民が検証できる市政になっているのか。
議会と市民のチェックを受ける姿勢が、本当にあるのか。
ここを厳しく見ることが、現職候補である石黒氏を評価するうえで不可欠だと思います。
水谷昇氏――民間・海外経験から「都市構造の転換」を訴える候補予定者
水谷昇氏は、民間企業、海外経験、起業経験を持つ候補です。公式サイトによれば、タイ・バンコクで17年間、経済記者・編集者として働き、2015年に名古屋市で起業。現在はインバウンド旅行業と外国人労働者支援の仕事をしているとされています。2024年には名古屋市長選にも挑戦し、その後、春日井市政について調べる中で、宅地化や土地区画整理、水害リスクなどに問題意識を持ったと説明しています。
水谷氏の特徴は、政策が非常に大胆で、都市構造そのものを変えようとしている点です。公式サイトでは、「投資的予算の使い道」によって街の未来は全く違うものになるとし、モビリティ、防災、子育て教育、福祉で日本の最先端を行く街を目指すと述べています。
水谷昇氏の政策を春日井市の課題に照らすと?
1つ目の「高齢化しても暮らせる都市」に対して、水谷氏は道風バスのシニアパス、高齢者相談員の倍増、高齢者・障がい者向けの出張行政サービス、高齢者向けサービス付き市営住宅の駅前誘致などを掲げています。 これは、福祉を単体で見るのではなく、交通、住宅、行政サービスと一体で考える発想です。
2つ目の「施設・学校・上下水道の更新」については、水谷氏は学校校舎の建て直し、土地区画整理事業の見直し、空き家・空き地の流動化、駅周辺整備、道路再整備などを掲げています。特に、熊野桜佐土地区画整理事業や西部土地区画整理事業の見直しを掲げている点は、現市政との対立軸になり得ます。
3つ目の「限られた財源」について、水谷氏は「お金がないと結局なにもできない」として、経済・産業政策を大きく打ち出しています。創業・新規事業への補助、医療・介護・防災分野の技術開発補助、農地集約化、女性活躍企業の進出補助などを掲げる一方、投資的予算の使い方を市民生活向上に振り向けるとしています。
ただし、水谷氏の場合、市民が見るべき点は、政策の大胆さと実現可能性のバランスです。道風バス20ルート以上・20分毎運行、無人自動運転化、ライドシェア本格導入、防災庁中部拠点誘致、防災専門大学誘致、市立大学設立などは、非常に大きな構想です。魅力はありますが、財源、法制度、県・国・事業者との調整、職員体制まで具体化されているかを見る必要があります。
4つ目の「生活の安全」については、水谷氏は3人の中でも水害・交通・防災に最も強く踏み込んでいます。庄内川水系の洪水対策の抜本的見直し、遊水池を兼ねた緑地公園、遊水機能を持つ中規模公園、災害ボランティアチーム支援、ペットシェルター公園などを掲げています。 また、公共交通についても、道風バスの拡充、自動運転、ライドシェア、バスの駅、駅周辺道路整備を掲げています。
5つ目の「透明な市政」については、水谷氏はインターネット公聴会を多用する構想を出しています。交通、防災、子育て教育、福祉、医療、経済産業、市政運営について、年6回以上のインターネット公聴会を常設し、10億円以上の事業についてもインターネット公聴会を行うとしています。 これは、市民が検証する市政という点ではかなり明確な提案です。

水谷氏を選ぶ意味は、春日井市を、名古屋のベッドタウンの延長ではなく、交通・防災・土地利用から作り直す選択です。一方で、その構想の大きさゆえに、実行可能性、財源、制度設計を厳しく見る必要があります。
5つの課題から見た、市民の判断軸

今回の春日井市長選を、市民目線で整理すると、3人の候補予定者の違いはかなりはっきりしています。
小嶋氏は、当事者性、IT、AI、多様性、孤立防止、市民参加を軸に、市政文化そのものをアップデイトしようとする候補です。
その特徴は、単に新しい政策を一つ二つ付け足すというより、古い市役所文化、古い意思決定、古い行政サービスのあり方そのものを見直そうとしている点にあります。市民の声が届きにくい構造を変えたい、少数者や孤立しがちな人が政治や行政から取り残されない仕組みをつくりたい、そうした問題意識が全体に通底しています。とりわけ、LGBTQ当事者団体の立ち上げやレインボーパレードの実施といった経験は、「見えにくい声を可視化する」という政治姿勢と結びついており、春日井市政にこれまでとは違う角度からの問いを投げかけています。古い市役所文化を変えたい人、市民参加や多様性をもっと前面に出したいと考える人にとっては、かなり魅力のある候補だと言えるでしょう。
ただし、その一方で問われるのは、インフラ更新、財政運営、都市計画といった、30万都市の基盤を支える課題に対して、どこまで具体的で総合的な設計を示せるかという点です。行政文化を変える構想は強い。しかし、それを都市全体の運営とどう接続していくのか。そこが、小嶋氏に対して市民が見極めるべきポイントになります。
石黒氏は、行政経験と現職実績を土台に、福祉、防災、学校、公共施設、上下水道、財政を総合的に進める候補です。
春日井市役所の内部を長く経験し、市長としても市政運営に当たってきた石黒氏の強みは、やはり実務能力と行政計画との接続力にあります。高齢化への対応、施設更新、上下水道の整備、防災、財政運営といった、市政の根幹に関わる領域について、現実にどう動かしていくかを最も具体的に理解している候補と言ってよいでしょう。市政の継続性を重視する人、急激な変化よりも安定的で着実な運営を求める人にとっては、石黒氏の安定感は大きな魅力です。
しかし、現職である以上、評価されるのは「掲げている政策」だけではありません。むしろ、この4年間の市政運営そのものが審判の対象になります。福祉や防災、インフラ整備を総合的に進めてきたとしても、その優先順位は本当に市民生活の側から組み立てられていたのか。重要な判断について、十分な説明責任が果たされていたのか。意思決定の過程は市民に見えるものだったのか。現職だからこそ、実績と同時に、透明性と説明責任が厳しく問われることになります。
水谷氏は、交通、防災、土地利用、経済政策を通じて、都市の形そのものを変えようとする候補です。
3人の中でも最も大胆なのが水谷氏の構想です。単に個別の政策を改善するというより、春日井という都市の構造自体を見直そうとしている。モビリティ、防災、子育て教育、福祉、産業政策を一体のものとして捉え、「投資的予算の使い道」によって街の未来は大きく変わるという視点に立っています。春日井の将来に対して強い危機感を持ち、これまでの延長線上では立ち行かないと考える市民にとっては、大胆な転換を訴えるその姿勢は大きく響くはずです。
とりわけ、交通と防災を都市構造の中心に置いている点は、水谷氏の大きな特徴です。高齢化社会に対応するための交通政策、水害を見据えた土地利用の見直し、駅周辺や道路の再整備、さらには経済政策まで含めて、春日井を「作り替える」発想が前面に出ています。
ただし、構想が大きい分だけ、当然ながら実現可能性と財源の精査が必要になります。大胆な政策は魅力的ですが、それが実際にどのような制度設計で進められるのか、財源をどう確保するのか、県・国・事業者との調整をどう進めるのか、行政体制として回るのか。水谷氏については、構想力とともに、その実行可能性を見極めることが重要になります。
こうして見ると、今回の春日井市長選の争点は、単なる政策比較ではありません。
行政経験を軸に市政を安定的に進めるのか。
当事者性とITで市政文化をアップデイトするのか。
交通、防災、土地利用から都市構造を作り替えるのか。
問われているのは、春日井市をこれからどの方向へ導くのかという、より根本的な選択です。
そして、私が最も重要だと思うのは、市民が検証できる透明な市政に変えられるかという点です。市政は、政策を発表して終わりではありません。なぜその政策を決めたのか、なぜその予算をつけたのか、なぜその契約や支出を行ったのか。その意思決定過程が市民に見えるものでなければ、民主的な市政とは言えません。
この点は、すでに述べた「透明性に疑義のある石黒市政」の問題とも直結します。
PFAS問題では、検査結果の数値だけでなく、いつ市が結果を把握し、誰が報告を受け、なぜ公表・非公表を判断したのかが問われます。
花王関連の土地売買契約解除・相殺処理では、30億円相当の財産処理について、地方自治法が求める議会の議決を経るべきだったのではないかが問題になります。
市長交際費についても、特定政党が関わる会合への支出が、市民全体の利益に資する公的支出だったのか、憲法15条2項の「全体の奉仕者」との関係で問われます。
これらに共通するのは、結論だけでなく、判断過程が市民に開かれていたのかという問題です。市政の透明性とは、行政に都合のよい結果を公表することではありません。誰が、どの根拠で、どの手続を経て判断したのかを、公文書と説明によって市民が後から検証できる状態にしておくことです。
水道水の安全も、巨額の財産処理も、市長交際費の支出も、市民の生活と税金に関わる問題です。だからこそ、春日井市長選の本当の争点は、政策の数ではありません。
問われているのは、春日井市を、市役所の内側だけで決まる市政から、市民が見て、考え、検証できる市政へ変えられるか。
その一点に、今回の市長選の最も重要な意味があると、私は思います。
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