日本国憲法改正案の要旨(原田芳裕案)

スライド1
previous arrow
next arrow

目次

原田芳裕日本国憲法改正草案・詳細要旨
――何を変え、なぜ変え、どのような国を目指すのか――

以下が私の憲法改正案です。

日本国憲法 改正案(原田芳裕案)~超護憲的日本国憲法改正案~

原田芳裕 日本国憲法改正草案 〔前文〕 日本国民と日本国は、恒常な平和を希求し、互いを尊重しあい、我が国と我が国民が、諸国及び諸国民と手を携えた協和による国際社…

はじめに――この改憲草案が目指すもの

法改正草案が、国民主権・基本的人権の尊重・平和主義を発展させ、国会・内閣・司法・地方自治・天皇・自衛隊を国民主権から組み立て直す考え方を示した図解。自衛権の範囲、指揮権、防衛予算、違憲な武力行使を止める司法制度、人格権や働く人の安全、教育費、外国人の権利、知る権利、夫婦別姓などの保障を制度化し、「国民の権利と平和を守るために国家権力を制限する憲法」を目指すことを表している。

この憲法改正草案は、現在の日本国憲法が掲げる国民主権、基本的人権の尊重、戦争放棄と平和主義を否定するものではない。

むしろ、それらをより具体的な制度として発展させ、国家権力によって後退させることのできない仕組みにすることを目的としている。

その中心にあるのは、**「国民一人ひとりが、この国の主人公である」**という考え方である。

国民主権を単に理念として掲げるだけではなく、国会、内閣、司法、地方自治、天皇、自衛隊など、国家を構成するあらゆる制度を国民主権から組み立て直す。

特に平和主義については、戦争を放棄すると宣言するだけでなく、自衛権をどこまで認めるのか、自衛隊を誰が指揮するのか、防衛予算を誰が決めるのか、政府が自衛権を拡大解釈した場合に誰が止めるのか、そして国民自身が違憲な武力行使の停止を司法に求めることができるのか、というところまで制度化する。

また、基本的人権についても、人格権、働く人の安全、教育費、外国人の権利、知る権利、夫婦別姓、地方自治など、現在の社会で具体的に問題となっている分野まで保障を広げている。

したがって、この草案の基本的な考え方は、

「国家を強くするために国民の権利を制限する憲法」ではなく、「国民の権利と平和を守るために国家権力を制度によって制限する憲法」

をつくることにある。


前文

国民主権・基本的人権・平和主義を一体の理念として捉える

前文では、現在の日本国憲法の理念を継承しながら、その意味をより具体的に展開する。

第一に、日本国と日本国民は恒常的な平和を求め、諸国・諸国民との協和によって国際社会全体の発展に尽力する存在であることを明らかにする。

第二に、基本的人権を単なる個人的利益の保障としてではなく、人格の尊重を出発点として、一人ひとりが人間らしく生き、互いの違いを尊重しながら社会全体の幸福をつくるための権利として位置づける。

第三に、人権、自由、平和を完成されたものとは考えない。

一人でも自由と平和を享受できていない人がいるならば、社会はなお「道半ば」であるという立場をとる。

第四に、国政の権威は国民に由来し、権力は国民の代表者が行使し、その利益は国民が享受するという国民主権の原理を改めて確認する。

第五に、現行憲法制定時に示された「政府の行為によって再び戦争の惨禍が起こることのないようにする」という決意を、過去の文章として終わらせず、現在を生きる国民が引き継ぐべき決意として位置づける。

したがって、この前文においては、

国民主権によって基本的人権を保障し、基本的人権を保障する社会だからこそ平和を追求し、その平和を国民一人ひとりが不断の努力によって発展させる

という、この草案全体を貫く思想を示している。


第1章 国民主権

国民主権を憲法全体の出発点とする

憲法改正草案が、国民主権・基本的人権の尊重・平和主義を発展させ、国会・内閣・司法・地方自治・天皇・自衛隊を国民主権から組み立て直す考え方を示した図解。自衛権の範囲、指揮権、防衛予算、違憲な武力行使を止める司法制度、人格権や働く人の安全、教育費、外国人の権利、知る権利、夫婦別姓などの保障を制度化し、「国民の権利と平和を守るために国家権力を制限する憲法」を目指すことを表している。

第1条――主権在民と、その徹底原則

日本国の主権が日本国民にあることを、第1条として明確に定める。

さらに重要なのは、国民主権を単なる国家統治の方式として位置づけるのではなく、基本的人権の尊重と保障、戦争放棄、平和主義を永続させるための原則として位置づけることである。

このため、以後の国会、内閣、天皇、自衛隊、司法、地方自治などの制度は、すべて「その権限はどこから来るのか」という問いに対して、最終的には国民に由来するよう構成される。

この草案では、国民主権は憲法上の一つの原則ではなく、憲法全体を支える根本原理となる。


第2章 元首及び天皇

天皇を「国民の信頼に基づく象徴的元首」として明確化する

「第2章 元首及び天皇」を整理した図解。天皇を「国民の信頼に基づく象徴的元首」と位置づけ、地位の根拠が国民の信頼にあることを中央で強調している。第2条では、天皇を象徴としての元首と明記しつつ、主権や統治権は持たず、皇族の財産権制限・参政権不付与、政治的・宗教的利用の禁止、国民の批判権保障を示す。第3条では、天皇の行為に国会の助言と承認を必要とし、内閣が責任を負うことを示す。第4条では、天皇に国政権能がなく、行為は憲法で定めた範囲に限られることを示す。第5条では、首相と最高裁長官の任命は国会の指名に基づく形式的行為であることを示す。第6条では、国事行為を「国会の承認と内閣の助言」で行うものと、「内閣の承認と助言」で行うものに分け、地方自治体の首長は住民の選挙結果をもって天皇が任命すると整理している。第7条では、皇位継承は国会議決による皇室典範で定め、摂政は天皇の名で行為することを示す。第8条では、皇室への財産譲渡や取得・賜与に国会議決を必要とし、皇室財産も国会統制の下に置くことを示す。全体として、天皇を象徴的元首として明確化しつつ、その全てを国民主権と国会統制の下に置く構想を表したインフォグラフィック。

第2条――天皇の地位とその根拠

天皇を「象徴としての元首」と明記する。

しかし、その地位は天皇自身に固有の主権や統治権があるからではなく、主権者である国民の信頼によってのみ成立する地位とする。

同時に、天皇・皇族については、その特殊な憲法上の地位を維持するため、財産権を制限し、参政権を認めない。

また、天皇や皇族を宗教的・思想的・政治的目的のために利用することを禁止する。

その一方で、国民が天皇・皇族を批判する権利も明文で保障する。

これは、天皇への敬意を理由として、国民の思想・信条・表現の自由が抑圧されることを防ぐためである。旧要旨でも、批判する権利を「国民の信頼の一形態」として保障することが意図されていた。

第3条――天皇の行為に対する国会の助言と承認

元首としての天皇の行為には国会の助言と承認を必要とし、内閣が国会を代理して責任を負う。

現行憲法の「内閣の助言と承認」を基本とする制度から、より国民主権を直接反映する国会を中心とする制度へ移すものである。

第4条――天皇の権能の限定

天皇には国政に関する権能がないことを明確にする。

天皇が行うことのできる行為は憲法に定められたものに限られ、国事行為の委任も国会が承認した範囲に限定される。

第5条――内閣総理大臣及び最高裁判所長官の任命

天皇は、国会の指名に基づいて内閣総理大臣を任命し、同じく国会の指名に基づいて最高裁判所の長たる裁判官を任命する。

天皇自身が人選するのではなく、主権者から選ばれた国会の決定を形式的に確定する行為とする。

第6条――国事行為

国事行為を性質によって分ける。

憲法改正・法律・条約の公布、国会の召集、衆議院解散、国政選挙の公示、大赦等の認証、栄典、外交文書の認証などについては、国会の承認と内閣の助言によって行う。

一方、国務大臣等の任免の認証、外国大使・公使の接受、儀式、政令の公布などは、内閣の承認と助言によって行う。

また、地方自治体の首長については、住民による選挙結果をもって天皇が任命する。

このように、天皇の国事行為を一律に扱わず、その行為が国民主権・立法府・行政のいずれと深く関係するかによって手続を分けている。

第7条――皇位継承と摂政

皇位の継承は国会が議決する皇室典範によって定める。

摂政が置かれた場合には、摂政が天皇の名で元首としての行為を行う。

第8条――皇室への財産授受の制限

皇室への財産譲渡、皇室による財産取得・賜与については国会の議決を必要とする。

皇室の財産関係についても国民主権と国会による統制の外に置かない制度である。


第3章 平和主義

戦争放棄を維持しながら、自衛権を厳格に制度化する

憲法改正草案「第3章 平和主義」を整理した図解。第9条で戦争・武力による威嚇・武力行使・交戦権を放棄し、第10条で自衛権と自衛隊を憲法上認める一方、行使条件を日本への武力による威嚇・武力行使があった場合に限定し、自衛隊の規模を必要最小限とする構造を示している。さらに、自衛隊の指揮監督を参議院防衛委員会に置き、情報の原則全面公開、機密の例外的延期、徴兵・強制動員の禁止、集団的自衛権とその支援行為の制限を明記。第11条では国際紛争の平和的解決、第12条では核兵器と核関連技術の禁止、第13条では私人による兵器売買・保有の原則禁止と国会承認・情報公開を定め、戦争放棄を維持しながら自衛権を厳格に制度化する考え方を表している。

第3章の1 戦争の放棄と自衛権

第9条――戦争・武力行使・交戦権の放棄

国権の発動としての戦争、武力による威嚇、武力の行使を永久に放棄する。

さらに日本国の交戦権そのものを放棄することを明記する。

国際紛争を解決するための戦力の保持も禁止する。

この草案は、現行第9条の平和主義を弱めるのではなく、交戦権の否認をより明確にする方向で発展させる。

第10条――自衛権と自衛隊

一方、日本国には自国の領土・領海・領空・国民を守るための自衛権があることを明記する。

ただし、自衛権を行使できるのは、他国又は他国民から日本国・日本国民に対して武力による威嚇又は武力行使が行われた場合に限定する。

自衛を理由として事実上の交戦権へ転化することも認めない。

その自衛権を実行する機関として自衛隊を憲法上明記するが、その規模は必要最小限とする。

さらに大きな特徴として、自衛隊の指揮監督権を内閣から切り離し、参議院に設置する防衛委員会に置く。

自衛権を通常の行政権から分離することで、一つの内閣や多数派政権の政治判断によって軍事力が拡大していくことを防ぐ。

また、自衛隊については組織、装備、技術、仕様、取引、外国との取決めを含む情報を原則として国民に全面公開し、「機密」を原則として認めない。

ただし、公開によって人の生命・身体に具体的かつ切迫した危険が生ずる場合には、法律に基づく必要最小限の期間だけ開示を延期できる。

さらに徴兵、強制動員を禁止する。

集団的自衛権については、武力による威嚇・武力行使だけでなく、その武力行使を支援する行為も禁止する。

つまりこの草案は、

自衛権を認める代わりに、その目的・規模・指揮権・情報・人員動員・集団的自衛権まで憲法で厳格に制約する

構造を採っている。

第3章の2 国際紛争の平和的解決、核兵器保有の禁止及び兵器売買の禁止

第11条――国際紛争の平和的解決

政府、国会、国民に対し、武力行使・武力による威嚇を伴わない平和的方法によって国際紛争を解決することを求める。

平和主義を政府だけの義務ではなく、日本社会全体が追求すべき価値とする。

同時に、他国・他国民への攻撃、侮辱その他人権侵害につながる信条・思想の表出と実行を禁止する。

第12条――核兵器と核関連技術

核兵器の保有・製造・開発を禁止する。

さらに核兵器へ転換可能な技術の開発・利用を禁止し、原子力を含む核兵器・大量破壊兵器につながる技術や、それらを根源とする技術の平和的利用についても禁止する。

核兵器だけを切り離して禁止するのではなく、核兵器を生み出す技術基盤そのものまで対象とする考え方である。

第13条――兵器売買と保有

私人等による兵器の売買・保有を原則禁止する。

例外は、自衛隊が必要最小限の兵器を保有するために必要な場合に限る。

その場合でも兵器取引には国会の承認を必要とし、取引情報を国民に開示する。

不適切な兵器取引は無効とし、それによって製造・配置・保有された兵器や、規定に抵触する施設・機械等は廃棄する。

武器の保有・取引を通常の市場経済から切り離し、平和主義の下で例外的に管理する制度である。


第4章 国民の権利及び義務

基本的人権を現代社会の具体的問題まで広げる

憲法改正草案「第4章 国民の権利及び義務」を整理した図解。国籍・外国人の基本的人権、個人の尊重と人格権、平等と差別禁止、公務員の選定・罷免、請願権、国家賠償、奴隷的拘束・徴兵の禁止、思想・信教・表現・報道・知る権利、居住・職業選択、学問、婚姻と夫婦別姓、生存権、教育・憲法教育、勤労と安全配慮、労働基本権、財産権、納税などを幅広く保障する構成を示している。特に、人格権の明文化、緊急事態でも停止されない徴兵・強制動員禁止、政教分離の強化、報道への権力介入禁止、公的高等教育の無償化、同一労働同一賃金、安全配慮義務、防衛目的の私有財産使用への厳格な制限を特徴としている。第36条から第45条では、適正手続、裁判を受ける権利、令状主義、弁護人依頼権、拷問禁止、自白強要禁止、遡及処罰・二重処罰の禁止、刑事補償などを保障し、国家権力を制限しながら一人ひとりの尊厳・自由・平等・生活を具体的に守る考え方を表している。

第14条――国民たる要件と重国籍

国民となる要件は法律で定める。

同時に、事実上の重国籍を理由として憲法上の権利・保障から排除されないことを明記する。

第15条――基本的人権と外国人

日本国民に侵すことのできない永久の基本的人権を保障するとともに、外国人についても基本的人権を保障する。

さらに、永住権などにより日本社会を構成すると認められる外国人については参政権を付与する。

第16条――権利を守る不断の努力

自由と権利は国民の不断の努力によって保持するものとし、濫用を禁止し、公共の福祉のために利用する責任を定める。

第17条――個人の尊重と人格権

すべての人を個人として尊重し、生命・自由・幸福追求権を最大限尊重する。

さらに、人格権を独立して明文化し、故意・過失を問わず人格を侵害されない権利を保障する。

人格そのものを基本的人権の中心に据える規定である。

第18条――平等と差別禁止

法の下の平等を保障し、人種、信条、性別、社会的身分、門地などによる差別だけでなく、生命・身体・精神を脅かされないことまで明記する。

華族・貴族制度を否認し、栄典に特権を伴わせない。

第19条――公務員の選定・罷免と選挙

公務員の選定・罷免を国民固有の権利とし、公務員を全体の奉仕者とする。

成年者普通選挙と投票の秘密を保障する。

第20条――請願権

損害救済、公務員罷免、法律・命令・規則の制定、改廃等について平穏に請願する権利を保障し、請願したことを理由とする差別待遇を禁止する。

第21条――国家賠償

公務員の不法行為による損害について、国又は公共団体に賠償を求める権利を保障する。

第22条――奴隷的拘束・苦役・徴兵の禁止

奴隷的拘束と意に反する苦役を禁止する。

さらに、自衛権を理由とした徴兵・苦役・動員を明確に禁止する。

自衛隊に直接・間接に関係したために苦役、人権侵害、不法行為、法令違反行為を強制された場合には、国への賠償請求や行為者への刑罰・処分を求める権利を保障する。

そして、この権利は緊急事態でも停止されない

第23条――思想及び良心の自由

思想・良心の自由を保障する。

第24条――信教の自由と政教分離

信教の自由を保障し、宗教団体が国から特権を受けたり政治権力を行使したりすることを禁止する。

国だけでなく地方自治体にも政教分離を及ぼし、宗教団体への補助、儀式・合祀の依頼、斡旋、推薦などを禁止する。

形式的な宗教行為についても対象とすることで、政教分離をより厳格にする。

第25条――表現の自由、報道の自由、知る権利

集会・結社・言論・報道・出版その他の表現の自由を保障する。

一方、人種、障害、性、門地、出自などを対象とする差別・侮蔑・人格侵害に当たる信条の表出については、その保障を制限する。

検閲を禁止し、通信の秘密を保障する。

さらに国務大臣、議員、首長、国・地方の公的機関が、報道や表現に介入したり自主規制を求めたりすることを禁止する。

国政・地方自治について国民が情報を知る権利にも最大限配慮する。

権力を批判し監視するための表現・報道・情報アクセスを重視する規定である。

第26条――居住・移転・職業選択

居住、移転、職業選択、外国移住、国籍離脱の自由を保障する。

差別を理由として他人の居住・移転・職業選択を妨害することも禁止する。

第27条――学問の自由

学問の自由を保障する。

第28条――婚姻・家族と夫婦別姓

婚姻を両性の合意に基づくものとし、夫婦の平等と個人の尊厳を保障する。

さらに夫婦が同姓か別姓かを選択できる権利を明文化する。

第29条――生存権

健康で文化的な最低限度の生活を保障し、国に社会福祉、社会保障、公衆衛生を向上・増進させる責務を課す。

第30条――教育

能力に応じて等しく教育を受ける権利と普通教育を受けさせる義務を定める。

義務教育を無償とするだけでなく、国・公共機関が運営する高等教育・大学教育も無償とする。

奨学金については無利子を原則とし、返済負担によって将来の生活設計が脅かされないよう求める。

第31条――憲法教育

児童、生徒、学生が基本的人権、国家制度、国会、地方自治、裁判所などを理解し、現在及び将来、自発的に憲法を遵守・実践できるよう、憲法教育を行う義務を定める。

憲法を専門家だけが理解するものではなく、主権者自身が理解し運用するものとする規定である。

第32条――勤労と安全配慮

勤労の権利・義務を定め、賃金、労働時間、休息等を法律で定める。

週40時間労働を原則とし、同一労働同一賃金を原則化する。

児童の酷使を禁止する。

さらに、働く者が人格を侵害されず、心身を損なわれない権利を保障し、すべての使用者に安全・安心に働ける環境を整備する義務を課す。

安全配慮義務を憲法上の原則に引き上げるものである。

第33条――労働基本権

団結権、団体交渉権、団体行動権を保障する。

第34条――財産権と防衛目的の財産使用

財産権を保障する。

公共目的で私有財産を利用する場合には正当な補償を必要とする。

しかし、自衛権を理由とする私有財産の使用は特に厳しく制限し、国家による強制使用を認めず、所有者本人の申出と防衛委員会の承認を必要とする。

その承認に疑義がある場合には、財産所有者だけでなく、その地域の地方議員又は国会議員も憲法裁判所に取消訴訟を起こすことができ、議員については所有者の同意を必要としない。

防衛を理由として国家が私人の土地・建物その他財産を際限なく軍事利用することを防ぐための規定である。

第35条――納税

国民に加えて地方自治体の住民にも、この憲法及び法律に基づく納税義務を定める。

第36条から第45条――刑事手続上の基本的人権

第36条で適正な法律手続なく生命・自由を奪ったり刑罰を科したりすることを禁止する。

第37条で裁判を受ける権利を保障する。

第38条で令状によらない逮捕を制限する。

第39条で抑留・拘禁について理由告知、弁護人依頼権、公開法廷で理由を示す権利を保障する。

第40条で住居等への侵入、捜索、押収を令状主義によって制限する。

第41条で公務員による拷問・残虐な刑罰を絶対的に禁止する。

第42条で刑事被告人の迅速な公開裁判、証人審問、弁護人選任などの権利を保障する。

第43条で不利益供述の強要を禁止し、強制・拷問・脅迫等による自白の証拠能力を否定する。

第44条で遡及処罰と二重処罰を禁止する。

第45条で、抑留・拘禁後に無罪となった者の刑事補償請求権を保障する。

これらにより、国家が刑罰権を行使する場合でも、人間の尊厳と自由を越えることはできないという原則を維持する。


第5章 国会

主権者の代表機関として国会の権限・公開性・自律性を強化する

憲法改正草案「第5章 国会」を整理した図解。国会を国権の最高機関・唯一の立法機関とし、衆議院と参議院による二院制、議員の全国民代表性、任期、選挙、不逮捕特権、院内発言の免責などの基本構造を示している。さらに、臨時会を少数派議員の要求でも召集できる制度、秘密会を認めない国会の全面公開、発言・表決記録の保存、少数議員による法律案・予算案提出権、国会議員一人ひとりへの国政調査権、議院の調査権、国務大臣の国会出席義務、弾劾裁判所、国会議員による抽象的違憲法令審査などを盛り込み、国会の公開性・自律性・監視機能を強化する構成を表している。特に、自衛権に関する行政権を国会に属させ、参議院と防衛委員会を中心に自衛隊の指揮監督や防衛立法を担わせつつ、防衛予算には衆議院のチェックを及ぼす独自の統治構造を示している。

第46条――国会の地位

国民が主権を行使するため、国会に国権の最高機関としての地位を与え、唯一の立法機関とする。

さらに、自衛権に関する行政権を国会に属させ、その事項を参議院の専属事項とし、自衛隊の指揮監督権を防衛委員会に属させる。

通常行政を内閣、自衛権を国会という二つの系統に分ける、この草案独自の統治構造の基礎となる規定である。

第47条――二院制

国会を衆議院・参議院で構成する。

第48条――全国民の代表

両議院を成人国民によって選挙された議員で構成し、議員は特定の地域・団体ではなく全国民を代表するものとする。

第49条――議員・選挙人資格

資格を法律で定める一方、人種、信条、性別、社会的身分、門地、教育、財産、収入等による差別を禁止する。

第50条・第51条――議員任期

衆議院議員の任期を4年、参議院議員の任期を6年として3年ごとに半数を改選する。

第52条――選挙制度

選挙区、投票方法その他の選挙制度を法律で定める。

第53条――両院兼職禁止

衆議院議員と参議院議員を同時に務めることを禁止する。

第54条――歳費

国会議員に相当額の歳費を保障する。

第55条――不逮捕特権

国会会期中の議員の不逮捕特権を保障する。

第56条――院内発言等の免責

議員が議院で行った演説、討論、表決について院外で責任を問われないことを保障する。

第57条――常会

国会の常会を毎年一回召集する。

第58条――臨時会

内閣による臨時会召集に加えて、いずれかの議院の総議員の4分の1以上から要求があれば、衆参両院の議長が臨時会を召集しなければならない。

少数派による国会召集要求を、内閣の判断だけに委ねない制度である。

第59条――衆議院解散と緊急時

衆議院解散後の総選挙・国会召集、参議院緊急集会について定める。

さらに衆議院解散中に緊急防衛事態が生じた場合、防衛委員長に防衛委員会を速やかに招集する義務を課す。

第60条・第61条――資格争訟と議決

議員の資格争訟、定足数、通常の過半数議決を定める。

第62条――国会の全面公開

国会の会議を公開し、秘密会を一切認めない

会議録を保存・公表し、国会議員の発言を会議録から削除することを禁止する。

さらに各議員の表決を必ず記録する。

誰が何を発言し、何に賛否を示したのかを主権者である国民が確認できるようにする制度である。

第63条――議院の自律

各議院が議長等を選び、両議院の議長を立法府の長として自律権に責任を負う者とする。

第64条――法律案・予算案提出権

5名以上の議員の同意で法律案を提出できるようにし、少数派にも立法提案の機会を保障する。

20名以上の衆議院議員の同意による予算案提出も認める。

内閣による法律案提出は衆議院に限定し、内閣には自衛権・自衛隊に関する法律案提出権を認めない。

自衛権・自衛隊に関する法律案・予算案は、参議院議員及び防衛委員会に提出権を限定する。参議院議員が防衛予算案を提出する場合には20名以上の同意を必要とする。

また、提出された法律案・予算案には誠実審議義務を課す。

第65条――法律の成立

原則として両院で可決された法律案を法律とする。

衆議院の再議決制度などを維持する。

成立した法律には、草案の現行文言上、衆議院議員と参議院議員が署名し、内閣総理大臣が連署することを必要とする。

立法と行政の責任関係を明示する規定である。

第66条――予算と衆議院の優越

予算を衆議院に先に提出し、両院不一致の場合には一定の条件で衆議院の議決を国会の議決とする。

このルールは自衛権・自衛隊予算にも適用される。

防衛を参議院・防衛委員会の専属的権限としながら、実際に国民負担を伴う防衛予算について衆議院のチェックを受けさせる構造である。

第67条――条約

条約締結に必要な国会承認にも予算と同様の衆議院優越の仕組みを準用する。

第68条――国会議員個人の国政調査権

議院だけではなく、国会議員一人ひとりに国政調査権を与える。

国の機関・公共機関に記録提出を要求でき、要求された側は拒否できない。

収集した記録は原則公開するが、個人情報・民間法人の機密については議院の判断で非公開とし、公開により損害が生じた場合には国会への請求権を認める。

第69条――議院の国政調査権

両議院にも証人出頭、証言、記録提出を要求する国政調査権を保障し、拒否を認めない。

収集記録についても原則公開とする。

第70条――国務大臣の国会出席

国務大臣は議案について発言するため出席でき、答弁・説明を求められた場合は出席しなければならない。

第71条――弾劾裁判所

裁判官の弾劾裁判所を両院議員で構成する。

第72条――国会議員による抽象的違憲法令審査

国会議員は、条例を除く法律、命令、規則、処分に違憲の疑いがある場合、具体的な被害や訴訟事件が存在しなくても最高裁判所に違憲法令審査を提訴できる。

国会多数派が違憲の疑いのある法律を成立させた場合にも、少数派議員が司法審査を起動できるようにする規定である。


第6章 防衛委員会と緊急事態

自衛権を政府から分離し、多重の統制下に置く

第6章の1 防衛委員会

第73条――防衛委員会の設置

参議院に防衛委員会を設置する。

自衛隊は防衛委員長を最高責任者として、防衛委員会の指揮監督を受ける。

防衛委員会を解散のない参議院に置くことで、内閣の政権交代や衆議院解散によって自衛隊の統制が不安定化することを避けると同時に、自衛権を行政権から分離する。

第74条――防衛委員長

防衛委員長は参議院議員の中から参議院が指名する。

第75条――党派均等の防衛委員会

防衛委員を参議院議員で構成する。

現在・過去に自衛隊に籍を置いた者は防衛委員になることができない。

また、防衛委員会は参議院の議席数に比例させるのではなく、議席を持つ政党・会派が均等になるよう構成する。

多数派政党が自衛権と自衛隊を事実上独占することを防ぐ制度である。

第76条――全会一致

憲法に別の定めがある場合を除き、防衛委員会の意思決定を全会一致とする。

安全保障について単純な多数決だけで決定するのではなく、可能な限り広い政治的合意を要求する。

第77条――防衛委員会の職務

緊急防衛事態における自衛権行使と自衛隊指揮、自衛隊関係法律・予算の審議、条約・国際法規の防衛関連部分の審議、自衛隊の行政事務、自衛権・自衛隊に関する政令制定を担当する。

防衛委員会を単なる国会審議委員会ではなく、自衛権行政そのものを担う機関と位置づける。

第78条――防衛委員・委員長の罷免

参議院は過半数で防衛委員や防衛委員長を罷免できる。

ただし少数政党・会派から選ばれた防衛委員については、単純な多数派によって排除されないよう罷免条件を厳格にする。

防衛委員長を罷免した場合は、新委員長の指名を最優先する。

第79条――防衛予算

防衛委員会が自衛権・自衛隊予算を作成し、防衛委員長が衆議院へ提出する。

提出そのものには全会一致を要求しないが、衆議院可決後、参議院に送られて防衛委員会で審議する際には全会一致を必要とする。

さらに第116条第2項及び第117条第2項による国会承認が得られなかった場合、「必要最小限」という第10条の要求を満たしていなかったものと扱い、防衛委員会及び防衛委員は翌年度の予算案提出権を失う。

防衛費が自己増殖することを防ぐため、会計上の失敗に制度的責任を伴わせるものである。

第80条――平和主義に関する憲法解釈

第9条から第13条までに関係する憲法解釈又は解釈変更について、防衛委員会の全会一致による発議と国会承認を要求する。

政府の一存による自衛権拡大解釈を認めない制度である。

第81条――防衛関連条約への統制

内閣が締結・批准する条約・国際法規のうち第9条から第13条に関係する部分は、防衛委員会の全会一致の承認がなければ効力を生じない。

批准前であっても、防衛委員会の承認が得られなければ内閣は批准できない。

外交権を内閣に残しながら、防衛政策について内閣だけで国際的義務を負うことを防ぐ仕組みである。

第6章の2 緊急事態

第82条――二種類の緊急事態

緊急事態を二つに明確に分ける。

外国から領土・領海・領空への武力攻撃を受けた場合を**「緊急防衛事態」**とする。

甚大な災害等が発生した場合を**「緊急保全事態」**とする。

切迫した危険があっても、現実の武力攻撃が行われていない段階で日本から先制的に武力攻撃することは禁止し、テロについても同様とする。

第83条――緊急防衛事態の発生・指揮・解除

緊急防衛事態における自衛隊指揮監督権を防衛委員会に置き、防衛委員長を最高指揮官とする。

防衛委員長が緊急防衛事態の発生を確認し、防衛委員会の過半数によって国際法上の宣言を行う。

通常は全会一致を原則とする防衛委員会について、この局面では迅速性を考慮して過半数とする。

防衛委員会を招集できない間などには防衛委員長が指揮監督を行う。

武力攻撃が止まり、切迫した脅威が取り除かれれば防衛委員会が解除する。

さらに最大の特徴として、自衛権の行使が第9条・第10条の限界を超え、違憲な自衛権や事実上の交戦権へ発展しようとした場合、最高裁判所が独立して緊急防衛事態の解除を命令できる

加えて衆議院も過半数で解除命令を出すことができる。

つまり自衛隊を指揮する防衛委員会自身だけに「戦争を止める判断」を委ねず、司法と、防衛委員会を構成しない衆議院の双方から停止できるようにする。

第84条――外交による解決

緊急防衛事態が確認された時点から、内閣に外交その他の方法によって国際社会を通じた解決を最大限追求する義務を課す。

自衛隊が活動している間にも、外交によって武力行使を終了させる努力を続けることを憲法上義務づける。

第85条――災害等の緊急保全事態

大規模災害等の場合、内閣は防衛委員長の承認を得て自衛隊に出動を命じることができる。

ただし、その場合でも自衛隊の指揮監督権は防衛委員会に残る。

防災活動と軍事的な自衛権行使を法的に区別しながら、自衛隊の統制系統そのものは維持する。


第7章 内閣

一般行政と外交を担うが、自衛権を独占しない政府をつくる

第86条――行政権

行政権は原則として内閣に属する。

ただし、自衛権に関する行政権を明確に除外する

第87条――内閣による平和条項の解釈禁止

内閣は第9条から第13条に関する憲法解釈を行うことができない。

歴代政権の判断による自衛権の拡大解釈を制度的に防ぎ、第80条の防衛委員会・国会による手続へ移す。

第88条――内閣の組織

内閣を内閣総理大臣と国務大臣で構成し、すべて文民でなければならない。

行政権の行使について国会に連帯責任を負う。

第89条――総理大臣の指名

国会議員から内閣総理大臣を国会が指名する。

両院の判断が異なる場合には、一定条件のもと衆議院の議決を優先する。

第90条――国務大臣

内閣総理大臣が国務大臣を任免し、その過半数を国会議員から選ぶ。

第91条――内閣不信任

衆議院が内閣不信任を可決した場合、10日以内に衆議院を解散しなければ内閣は総辞職する。

さらにこの草案では、参議院にも内閣不信任権を認める

参議院が不信任を可決した場合には、参議院には解散制度がないため、内閣は総辞職する。

自衛権が参議院の専属事項となることとの均衡を図る制度である。

第92条・第93条――総辞職と職務継続

総理大臣が欠けた場合、又は衆議院総選挙後最初の国会召集時に内閣は総辞職する。

新総理が任命されるまで職務を継続する。

第94条――総理大臣の権限

総理大臣は内閣を代表し、一般国務・外交関係について国会に報告し、行政各部を指揮監督する。

第95条――内閣の事務

法律の執行、国務の総理、外交、条約締結、官吏事務、予算作成、政令制定等を内閣の一般的職務とする。

ただし、自衛権については第46条、第73条以下、第86条などによる例外が優先する。

第96条――政令への署名

政令に主任国務大臣の署名と内閣総理大臣の連署を必要とする。

第97条――国務大臣の訴追

在任中の国務大臣の訴追について内閣総理大臣の同意を必要とするが、訴追する権利そのものを害しない。


第8章 司法と違憲法令審査

憲法違反を「宣言」するだけでなく、実際に止める司法へ

第8章の1 司法

第98条――司法権と裁判官の独立

司法権を最高裁判所と下級裁判所に属させる。

憲法が特に認める場合を除き特別裁判所を禁止し、行政機関が終審裁判を行うことも禁止する。

裁判官は良心に従って独立し、憲法と法律にのみ拘束される。

第99条――裁判所規則

最高裁判所に訴訟手続、弁護士、裁判所内部規律、司法事務などについて規則を定める権限を保障する。

第100条――裁判官の身分保障

裁判官を行政権から独立させ、罷免・懲戒について厳格な制約を置く。

第101条――最高裁判所裁判官

最高裁判所の構成、裁判官の任命、国民審査、定年、報酬を定める。

第102条――下級裁判所裁判官

下級裁判所裁判官の任命、10年の任期、再任、報酬などを定める。

第103条――裁判公開

裁判の対審・判決を原則公開する。

特に政治犯罪、出版に関する犯罪、基本的人権が問題となる事件については常に公開を要求する。

第8章の2 違憲法令審査権

第104条――最高裁判所と憲法裁判所

最高裁判所を違憲法令審査の終審裁判所とする。

そのうえで、必要な事件について憲法裁判所を設置する。

最高裁判所に憲法裁判所を設置する場合、その裁判官の4分の1を衆議院推薦、4分の1を参議院推薦とする。

地方議員による違憲条例審査に対応して下級裁判所に憲法裁判所を設置する場合は、5名以上の裁判官団とし、その5分の1以上を当該地方議会の推薦者で構成する。

司法の独立を維持しながら、憲法判断を行う裁判体の一部に議会を通じた民意を反映させる制度である。

第105条――抽象的違憲審査

第72条によって国会議員が違憲法令審査を提訴した場合、最高裁判所に憲法裁判所を設けて判断する。

第34条第4項に基づく自衛権関係の私有財産使用の承認取消しについても、条文上定められた場合に憲法裁判所で判断する。

さらに第124条により地方議員が条例の違憲性を争った場合には、下級裁判所に憲法裁判所を設置して初審を行い、最高裁判所を終審とする。

第106条――国民による具体的違憲審査

何人も裁判を提訴した際、その事件に関連する法律、命令、規則、処分、条例が憲法に適合するかどうかの判断を裁判所に申し立てることができる。

国会議員等の抽象的審査と異なり、具体的事件の中から国民自身が憲法審査を起動する制度である。

第107条――違憲判断の拘束力

裁判所が違憲と判断した場合、公権力と該当する法令をその判断に拘束する。

違憲判決を単なる司法上の意見に終わらせず、実際の公権力を拘束する。

第108条――自衛権に対する最高裁の独立審査と国民の申立て

最高裁判所は、提訴がなくても独自に、第10条及び第11条に関わる法律、命令、規則、処分の違憲性を判断できる。

さらに日本国民は、第83条第5項の緊急防衛事態解除命令や、この独立違憲審査について、最高裁判所に命令又は判断をするよう申立てできる。

これは非常に重要な規定である。

自衛権が憲法上の限界を超えようとしている場合に、

「実際に武力行使による被害を受けるまで誰も裁判を起こせない」

という事態を避け、司法による早期の抑制を可能にすることを目的とする。


第9章 財政

税金と防衛費を国民の統制下に置く

第109条――財政民主主義

国の財政処理を国会の議決に基づかせる。

第110条――租税法律主義

新たな租税や租税変更について法律又は法律の定める条件を必要とする。

第111条――国費支出・債務

国費の支出と国の債務負担について国会の議決を必要とする。

第112条――一般予算

内閣が毎会計年度の予算を作成し、国会の審議・議決を受ける。

第113条――予備費

通常の予備費は国会の議決に基づいて設け、内閣が責任をもって支出する。

一方、緊急防衛事態の予備費については、国会の議決に基づいて設け、防衛委員会が責任をもって支出する。

どちらについても事後の国会承認を必要とする。

一般行政財政と防衛財政の責任主体を分ける構造である。

第114条――皇室財産・皇室費

皇室財産を国に帰属させ、皇室費を予算に計上して国会議決を経た上で内閣が執行する。

第115条――公金の用途制限

宗教組織・団体や、公の支配に属さない慈善、教育、博愛事業への公金支出等を制限する。

第116条――会計検査と防衛会計検査

通常の国の収支について会計検査院が検査する。

一方、自衛隊の収支については、独立した防衛会計検査院が検査する。

防衛委員会は検査報告と決算を国会へ提出し、国会の承認を得なければならない。

自衛隊が内閣ではなく国会・防衛委員会の系統に置かれる以上、その会計検査についても通常行政とは異なる独立した監査制度を設ける。

第117条――財政状況の国民への報告

内閣は少なくとも年1回、国会と国民へ財政状況を報告する。

防衛委員会についても、少なくとも年1回、自衛隊の財政状況を国会・国民へ報告し、国会の承認を得なければならない。

「防衛だから秘密」という考え方を採らず、軍事費も国民主権の下で公開・検査・承認する制度である。


第10章 地方自治

地方自治を国から与えられる権限ではなく、国民主権の一部として保障する

第118条――地方自治の本旨

地方自治の本旨を具体化する。

地方自治を、日本国民に主権が存在することの根幹として、地域住民自身が自律して地域を治める権利と位置づける。

国や国の機関はこれを妨げることができない。

地方自治体には財産管理、事務処理、行政執行の権能を保障する。

第119条――地方議会と選挙

地方自治体に議会を設置し、首長、議員その他一定の公務員を住民による直接選挙とする。

さらに、住民としての地位を持つ外国人について、地方自治体の首長・議員選挙の選挙権を保障する。

国籍だけではなく、現実にその地域社会を構成し生活している住民にも地域政治への参加を認める考え方である。

第120条――地方自治体の独自財源

地方自治体が条例によって独自に租税を課す権限を認める。

国の税と地方税が重複する場合、最新草案では地方自治体による租税を優先し、二重課税を禁止する

さらに、地方自治体が地域産業の振興や公共サービス充実を目的として営利事業を行うことも認める。

ただし、営利事業の予算・決算は議会承認を必要とする。

地方自治を実質化するためには、行政権限だけでなく、自ら財源をつくる力が必要だという考え方である。

第121条――条例制定権

地方自治体は議会の議決によって条例を制定できる。

条例はその地域と住民に対して法律と同様の効力を持つ。

ただし、条例の内容が法律と抵触する場合は法律を優先する。

第122条――自治体の組織・運営

地方自治体の組織・運営に関する基本事項は法律で定める一方、条例によって地域独自の制度を定めることも認める。

全国一律の自治制度だけでは対応できない地域事情を尊重する。

第123条――地方自治特別法

特定の地方自治体だけに適用する特別法について、その自治体の住民投票で過半数の同意を得なければ国会は制定できない。

第124条――地方議員による違憲条例審査

地方自治体の議員は、所属自治体の条例に違憲の疑いがある場合、具体的紛争がなくても下級裁判所に違憲条例審査を提訴できる。

地方自治体の多数派が違憲の条例を制定した場合にも、少数派議員によって司法審査を起動できる制度である。


第11章 改正

憲法を変える最終決定権も国民に置く

第125条――憲法改正

憲法改正は、衆議院・参議院それぞれの総議員の3分の2以上によって国会が発議する。

その後、国民投票等において過半数の承認を必要とする。

承認された改正は、天皇が**「国民の名で」**公布する。

憲法を制定し、変更する最終的な主体が国民であるという国民主権を、憲法改正手続においても貫く。


第12章 最高法規

基本的人権と平和主義を、世代を超えて受け継ぎ発展させる

第126条――基本的人権・戦争放棄・平和主義の歴史的性格

基本的人権だけでなく、戦争放棄と平和主義についても、人類が長い歴史の中で獲得してきた成果として位置づける。

これらは過去の幾多の試練に耐え、現在及び将来の国民へ受け継がれる侵すことのできないものとする。

平和主義を一時代の外交政策ではなく、人類史的な憲法原理として捉える規定である。

第127条――憲法の最高法規性

憲法を国の最高法規とし、これに反する法律、命令、詔勅その他の国務行為について効力を認めない。

同時に、日本国が締結した条約・確立された国際法規を誠実に遵守する。

第128条――憲法を尊重し、発展させる義務

天皇・摂政、国務大臣、国会議員、裁判官その他公務員に、憲法を尊重し擁護する義務を課す。

さらに日本国民については、単に憲法に従うだけではなく、

「この憲法を遵守しつつ、発展させる義務」

を定める。

憲法は制定された瞬間に完成するものではない。

基本的人権も、民主主義も、平和主義も、その時代を生きる人々が考え、守り、より良いものへ発展させ続けなければ形骸化する。

その意味で、第128条は第1条の国民主権と前文の理念へ戻る規定である。

国民は国家権力から憲法によって守られる存在であるだけではない。

自ら憲法を理解し、守り、国家権力を監視し、次の世代へより良い形で引き継ぐ主体でもある。


おわりに――この憲法改正草案が目指す国

この改憲草案が目指しているのは、単純な「小さな政府」でも「強い政府」でもない。

目指しているのは、国民によって常に監視され、必要なときには止めることのできる国家権力である。

国民主権を第1条に置き、国会を国民が主権を行使する中心機関とする。

天皇についても、その地位の根拠を国民の信頼に置く。

内閣には一般行政と外交を委ねる一方、最も危険な国家権力の一つである自衛権については内閣から分離する。

自衛隊は認める。

しかし必要最小限に限定し、情報を原則公開し、徴兵を禁止し、集団的自衛権による武力行使を禁止する。

そして、その自衛隊を一つの政権に委ねず、各党派が均等に参加する参議院の防衛委員会が統制する。

それだけでも十分ではない。

防衛委員会にも権力が集中する可能性がある。

だからこそ衆議院が防衛予算を審査し、会計検査を行い、最高裁判所が違憲な自衛権の行使を止め、衆議院にも緊急防衛事態の解除権を与え、さらに国民自身から最高裁判所へ申立てをする道を開く。

つまり、この草案の平和主義は、

「政府を信頼して戦争をしないことを期待する平和主義」ではない。

「政府であれ、国会であれ、防衛委員会であれ、自衛隊であれ、一つの権力を完全には信用せず、複数の民主的・司法的統制によって戦争への暴走を止める平和主義」

である。

同じ考え方は基本的人権にも貫かれている。

人格権、表現・報道の自由、知る権利、労働者の安全、教育を受ける権利、家族における個人の尊厳、外国人の権利、地方自治などを具体化するのは、国民主権が選挙の日だけ存在するものではないからである。

人間が職場で働くときも、学校で学ぶときも、地域で暮らすときも、政府を批判するときも、裁判を求めるときも、そして戦争や緊急事態が発生したときでさえ、主権者であり、人格を持った一人の人間であり続けることを保障する。

地方自治についても同じである。

国民が主権者であるならば、国家全体の政治だけでなく、自らが暮らす地域についても住民自身が決定できなければならない。

そのため、地方自治の本旨を自律として具体化し、独自課税、事業、条例制定、外国人住民の政治参加、地方議員による違憲条例審査まで保障する。

そして最後に、第128条で国民自身に「憲法を発展させる」役割を置く。

この草案において、憲法は国家が国民に与えるものではない。

国家を縛るために国民がつくり、国民自身が守り、国民自身がより良いものへ変えていくものである。

したがって、この憲法改正草案が最終的に目指すものを一言で表すならば、

「国民一人ひとりの人格と幸福を出発点として、主権者である国民自身が国家権力を統制し、戦争を防ぎ、基本的人権と平和を不断に発展させ続ける国家」

である。

それが、この憲法改正草案の基本理念である。