【春日井PFAS訴訟】 上告及び上告受理申立て(=違憲について、最高裁の判断を求める)をいたしました

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私、はらだよしひろが、個人的に思ったことを綴った日記です。社会問題・政治問題にも首を突っ込みますが、日常で思ったことも、書いていきたいと思います。

【基礎知識】最高裁に上告するためには?

実は、最高裁に審理を申し立てるのには要件があり、大まかに原判決に対する①憲法違反の審理(民事訴訟法第312条)=上告理由 ②法令※判例も含む解釈の違反の審理(民事訴訟法318条)=上告受理申立て理由 があります。それぞれ、民事訴訟法の手続きにのっとり、最高裁に審理を申し立てることができます。

春日井PFAS訴訟では、①第1審から憲法違反を主張しているので、この点で上告理由を出し、そして、②第1審で、財政支出行為に関わった職員たちが、地方自治法242条の2第1項4号の「当該職員」ではない、と判断したことが、判例解釈の違反があるとして、上告受理申立て理由を それぞれ出しました。

ここでは、そのことについて述べたいと思います。

【春日井PFAS訴訟】上告理由

上告理由書

以下、本件の上告理由書をPDFでお示しいたします。

上告理由書

以下、この上告理由書について、分かりやすく説明します。

上告理由書の内容を分かりやすく説明します。

はじめに

今回の上告理由書は、春日井市のPFAS(有機フッ素化合物)水質検査で、国の暫定目標値を超えた結果が出たのに、それを公表せず、別の契約で“低い数値”を出してその結果だけを公表した」という一連の対応を、住民訴訟として争ってきた流れの中で、最高裁に“憲法判断をしてほしい”と求めるものです。上告理由書では、この問題が単なる手続ミスではなく、憲法上の権利(知る権利・生存権)に直結する、と位置付けています。

1 何が起きたのか(ポイントは「二つの検査結果」と「公表のされ方」)

時系列を極力シンプルにまとめます。

  • 2023年8月7日、市に8月1日採水分の速報が届き、町屋第3水源60ng/ℓ、町屋第6水源56ng/ℓで、暫定目標値50ng/ℓを超えたことが分かりました。
  • その後、追加検査を行う方針となり、当初は「契約変更」で進める前提でしたが、8月15日ころに「別契約」で実施する方向へ変更。
  • 8月18日、市長名で別契約が締結され、金額は224,400円。
  • 市のHPでは、8月21日採水分(18、32、47ng/ℓ)は公表されている一方、8月1日採水分(24、60、56ng/ℓ)は現在も公表されていない、と整理しています。

私が問題だと考える核心は、「基準値超過を含む結果を非公表のままにして、その状態を前提に別契約を結び、低い結果だけを出して公表した」という“判断過程の構造”です。

2 上告理由書の三本柱(憲法21条・25条・99条)

上告理由書は、次の三つの憲法論点を柱にしています。

(1) 憲法21条(知る権利)

水質情報は、住民が自分や家族の健康リスクを判断するための前提です。にもかかわらず、基準値超過を含む検査結果が公表されないことは、行政が自ら掲げた「公表」方針(検査計画)も踏まえると、知る権利の実質を空洞化させる――これが私の主張です。上告理由書

(2) 憲法25条(生存権)

生存権は抽象論になりがちですが、上告理由書では「安全な飲料水」と「健康リスク回避に必要な情報提供」が、最低限度の生活の具体的条件だ、という切り口を前面に出しています。基準値超過情報が秘匿されれば、住民は行動選択(回避・問い合わせ・是正要求)をできなくなる。それは“健康保持の前提”を壊す、という整理です。

(3) 憲法99条(公務員の憲法尊重擁護義務)

さらに、市長や関係職員は、憲法を尊重し擁護する義務を負う公務員です。重大な健康情報を把握しながら、公表しない運用を続け、しかも別契約で「見かけ上問題がない」状態を作るなら、99条が要請する憲法適合的な行政運営に反する――というのが骨格です。

3 なぜ「上告理由」になるのか(民訴法312条2項6号)

最高裁に行くためには、「違憲」だけでなく、法律上の上告理由の形に落とし込む必要があります。そこで私は、原審(名古屋高裁)が、21条・25条・99条の違憲主張を実質的に判断せず、「財務会計上の行為に当たらない」などとして憲法判断を回避した点を、民訴法312条2項6号(理由不備・理由の食い違い)に当たる、と主張しています。

要するに、「憲法に触れないまま結論だけ出していないか?」「別契約の支出(財務会計)と、非公表という違憲的な判断過程は切り離せないのでは?」という問いを、最高裁に突きつける構図です。

おわりに

この上告理由書で私が一番伝えたいのは、水質という“生活の土台”に関する情報が、行政の都合で選別され、しかもそのために公金支出の形が使われてしまうと、住民訴訟のチェック機能も骨抜きになり得る、という危機感です。最高裁には、地方行政の現場で憲法がどう働くのかを、正面から示してほしいと思っています。

【春日井PFAS訴訟】 上告受理申立て理由

上告受理申立て理由書

以下、本件の上告受理申立て理由書をPDFでお示しいたします。

上告受理申立理由書

以下、この上告受理申立て理由書について、分かりやすく説明します。

上告受理申立理由書を分かりやすく説明します。

私が最高裁に提出した「上告受理申立理由書(令和7年12月12日)」の“読みどころ”を、法律に詳しくない方にも伝わるように噛み砕いた説明です。


1 そもそも「上告受理申立て」って何?

最高裁には「上告(憲法違反など)」とは別に、重要な法律問題がある事件を“受理”して審理してもらうための手続があります。それが「上告受理申立て」です。
私の受理申立理由書は、ざっくり言うと、下級審の“当該職員”判断が最高裁判例(昭和62年4月10日判決)に反して狭すぎる、そして審理手続としてもおかしい――この2本立てで、最高裁に判断を求める文書です。


2 事件の前提:PFASの検査結果「非公表」と「別契約」

受理申立理由書の出発点は、ここです。

  • 令和5年8月1日採水のPFOS/PFOA検査で、町屋第3水源60ng/ℓ、町屋第6水源56ng/ℓと、暫定目標値50ng/ℓを超える結果が速報で判明した。
  • しかし春日井市は、その8月1日採水分を現在まで公表していない
  • その“非公表状態”を前提に、追加検査を「契約変更」ではなく**別契約(224,400円)**で締結し、8月21日採水分の“低い数値”だけを選別的に公表している。

私は、この「非公表」と「別契約による支出」は、動機・目的として切り離せない(実質的に二重支出だ)という立て付けで、住民訴訟を提起してきました。


3 受理申立ての核心:争点は「当該職員」

住民訴訟(地方自治法242条の2第1項4号)では、損害賠償請求の相手方になれるのは原則として「当該職員」です。
この事件で下級審は、伊藤所長ら(所長・主査級職員)が「当該職員ではない」として、そこを門前払い的に処理しました。

でも私の主張はこうです。

  • 「当該職員」は、名義上の決裁者だけを指すのではない。
  • 昭和62年最高裁判決は、“権限を法令上本来的に持つ者”だけでなく、**「委任を受けるなどして権限を有するに至った者を広く意味する」**と言っている。
  • 下級審は、この“広く”の部分を事実上見ないまま、狭く切り詰めている。

4 なぜ「実質的決定者」を外すのが危険なのか

受理申立理由書では、本件別契約に至る中核を、かなり具体的に描いています。

  • 追加検査の協議をしたのは誰か
  • 「契約変更→別契約」へ方針転換したのは誰か
  • 見積徴取・起案・「協議済」など、実務上の決定過程に誰が関与したのか

そして結論として、契約方式や金額という“財務会計行為の核心”は、内部の協議・起案・承認の過程で具体的に決まっており、市長決裁は形式的承認にとどまる構造だと述べています。

ここで私が言いたいのは単純です。
もし「名義上の権限者しか当該職員じゃない」という運用が通ってしまうと、自治体は、実務上の決定を現場に任せつつ、責任追及だけは常に“名義”のところで止められる。すると、住民訴訟の予防・是正機能が骨抜きになります。


5 もう一つの柱:弁論主義違反(手続の瑕疵)

この受理申立理由書が面白い(=強い)のは、判例解釈の問題だけでなく、裁判の進め方そのものにも切り込んでいる点です。

原判決は「当該職員」を否定するにあたり、当事者が争点として主張・立証していない
**「権限の委任又は専決が認められない」**という前提事実を、判決の基礎に据えた――これは弁論主義(当事者主義)の基本に反する、という指摘です。

つまり私は、「結論が違う」だけでなく、その結論の作り方が手続的におかしいとも主張しています。


6 だから最高裁に“受理”してほしい

上告受理申立理由書は最後に、「これは個別事件にとどまらず、全国の住民訴訟実務に影響する重要問題だ」と位置付けます。争点は、まさに住民訴訟の根幹である「当該職員」概念の射程だからです。

PFASのように、住民の生命・健康に直結し、行政の説明責任が問われる局面で、責任主体を形式論だけで狭く切ってしまえば、統制は働きません。だからこそ、最高裁に「当該職員」概念を実務に即して整理し直してほしい――それが、この受理申立理由書の狙いです。

まとめ 私がこの訴訟でのぞむもの

本件で私が最高裁に求めたいのは、PFAS検査で暫定目標値超過の可能性が出たにもかかわらず「結果を公表しないまま別契約で追加検査を行い、低い結果だけを公表する」という行政判断が、憲法上の知る権利・生存権、そして公務員の憲法尊重擁護義務に照らして許されるのかを、正面から判断してもらうことです。

あわせて、住民訴訟の入口である「当該職員」概念を形式的に狭める運用が固定化すれば、実質的決定者が責任を免れ、住民訴訟の監視機能は骨抜きになります。

私はこの訴訟を通じて、行政が「安全に関わる情報」をどう扱うべきか、そして住民がそれを検証できる仕組みをどう守るべきかについて、最高裁の明確な指針を引き出したいと考えています。

はらだよしひろと、繋がりたい方、ご連絡ください。

私、原田芳裕は、様々な方と繋がりたいと思っています。もし、私と繋がりたいという方は、是非、下のメールフォームから、ご連絡ください。ご相談事でも構いません。お待ちしております。

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