春日井は学術都市だ。味美古墳群から中部大学研究まで──全国・世界が注目する“知られざる学術拠点”
私、はらだよしひろが、個人的に思ったことを綴った日記です。社会問題・政治問題にも首を突っ込みますが、日常で思ったことも、書いていきたいと思います。



春日井は「普通のベッドタウン」どころか、全国スケールで見てもかなり“濃い”学術・文化資源が揃っています。
ざっくり言うと、
- 古代史・考古学(味美古墳群・松河戸遺跡群)
- 中世〜近世の宗教・建築史(密蔵院など)
- 近代鉄道と産業遺産(愛岐トンネル群)
- 書道史・小野道風と書専門美術館
- サボテンを軸にした農業・食文化
- 中部大学を拠点とする自然科学・生命科学研究
あたりが、日本全体・世界レベルに接続している部分です。
今回は、春日井市が「学術都市!?」という視点でご紹介したいと思います。
目次
1 味美古墳群・松河戸遺跡群:古代史研究の基準資料
(1) 味美二子山古墳(Ajiyoshi Futagoyama Kofun)
- 春日井市二子町の前方後円墳で、全長約95〜96m。
- 1936年に国の史跡に指定されており、味美白山神社古墳・御旅所古墳などと合わせて「味美古墳群」を形成します。
- 尾張地方有数の大型古墳で、6世紀前半の築造と考えられ、尾張氏の権力構造や畿内との関係を考えるうえで重要な遺跡として、全国の古墳研究の文献でもしばしば参照されます。全国こども考古学教室+1
※古墳の規模・形状・埴輪の特徴は、畿内の今城塚古墳などとの比較研究の題材にもなっており、「尾張とヤマトの関係」を論じるときに、味美古墳群がよく引かれます。
(2) 松河戸遺跡群と自然科学(珪藻分析)
- 松河戸町周辺に広がる松河戸遺跡群は、縄文〜弥生〜古墳にかけての集落・水辺遺構が重なって見つかっている「多層的遺跡群」です。国立奈良文化財研究所の遺跡報告でもまとめて扱われています。
- 特に、弥生時代の水辺環境を復元するための**珪藻分析(理科系分析)**の対象として、この遺跡群の試料が用いられており、J-STAGE掲載の論文で詳細な報告があります。
→ つまり松河戸は「ただの遺跡」ではなく、自然科学的手法(珪藻・環境変遷研究)のテストフィールドとしても使われており、考古学と環境科学が交わる全国的なケーススタディになっています。
2 密蔵院・瓦窯跡:中世〜近世の宗教・建築史
(1) 密蔵院の多宝塔・薬師如来像(国指定重要文化財)
- 熊野町の密蔵院多宝塔は、室町時代頃のものとされる木造多宝塔で、国指定重要文化財。構造・意匠の点で中世塔婆建築研究の重要な作例とされています。文化遺産オンライン+1
- 同寺の木造薬師如来立像も重要文化財で、鎌倉〜南北朝期の精緻な造像技法を伝える作例として、美術史・仏像史の研究書に頻繁に登場します。国指定文化財データベース+1
→ 春日井の一山寺院ですが、「中世仏教建築」「仏像彫刻」の全国的な比較研究のなかに、普通に並ぶ存在です。
(2) 白山瓦窯などの古瓦窯跡
- 春日井市域には、奈良〜平安期の瓦を焼いたとされる瓦窯跡が点在しており、例えば「白山瓦窯跡」は愛知県指定文化財として、文化遺産オンライン等に登録されています。
- これらの窯跡は、東海地方の寺院・官衙に瓦を供給した「生産拠点」として位置づけられ、古代瓦流通・技術史研究のデータの一部になっています。
3 旧中央線・愛岐トンネル群:近代鉄道と市民主体の産業遺産
- 定光寺〜玉野にかけての愛岐トンネル群は、明治末〜大正期に建設された旧中央本線の煉瓦トンネル群で、複数のトンネル・橋梁が登録有形文化財や近代化産業遺産に選定されています。
- 市民団体「愛岐トンネル群保存再生委員会」による保存・一般公開が進められ、近代鉄道遺産を市民主体で保全・活用している好例として、都市計画・景観・観光学の分野からも注目されています。
→ 「紅葉の名所」として知られる一方で、
- 近代土木史(煉瓦アーチ・鉄道構造物)
- 里山生態系の再生や景観保全
をセットで研究・実践するフィールドになっており、全国の廃線跡活用の成功例としてしばしば紹介されています。
4 小野道風と春日井市道風記念館:書道史・美術館学の拠点
(1) 小野道風の出身地としての春日井
- 平安中期の書家・小野道風は、藤原佐理・藤原行成と並ぶ「三跡」の一人で、日本独自の和様の書を確立した人物として、東アジア書道史でも極めて重要です。
- 道風の出身地については諸説ありますが、その一つが**尾張国春日部郡松河戸(現在の春日井市松河戸町)**であり、海外の百科事典的な解説でもそのように記述されています
(2) 春日井市道風記念館(書専門美術館)
- 松河戸町にある春日井市道風記念館は、
- 小野道風の業績を紹介し
- 平安〜現代までの書作品約2600〜2900点を収蔵する
書道専門の美術館です。
- 他館と比べても「書だけ」を専門分野に掲げる美術館は全国的に多くなく、美術館・博物館ポータルサイトや美術系メディアでも、数少ない書専門館の一つとして位置づけられています。アイエム[インターネットミュージアム]+1
→書道史・古筆学・東アジア美術史の研究者にとっては、
- 小野道風関連の史料
- 江戸〜近代の書家資料(藤田東谷・伊藤東海・林楽園文庫など)
を閲覧できる拠点であり、「道風=春日井」というローカルな伝承が、学術ネットワークの中で検証・活用されています。
5 「サボテンのまち春日井」:農業・食文化と地域ブランド
(1) サボテン生産:国内有数の産地
- 園芸メディアやライフスタイル誌の取材では、春日井市桃山地区などが日本有数のサボテン産地であり、昭和初期からの栽培の蓄積により全国トップレベルの技術を持つ生産地として紹介されています。Garden Story+1
- 特に**実生栽培サボテン(タネから育てる高品質な栽培方式)**の出荷量が全国1位クラスとされ、サボテン農園「後藤サボテン」などは、全国向けの卸売・ネット販売・観光体験の場としても取り上げられています。life-designs.jp+1
(2) サボテン食文化と観光プロジェクト
- 春日井のサボテンは観賞用だけでなく、**食用サボテン「ノパル」**としての利用が進んでおり、地元メディアやガーデン誌が「サボテン料理」「サボテン・スイーツ」を含む独自の食文化として紹介しています。
- 「サボテンのまち春日井」プロジェクトは、観光・まちづくりの文脈でしばしば事例として言及されており、特産品を軸にした地域ブランド戦略の研究対象にもなりつつあります。
→ 農業経済・マーケティング・観光学などから見ると、
「実生サボテン+食文化+観光ブランド」というセットで分析しがいのあるフィールドと言えます。
6 中部大学(春日井キャンパス)発の世界レベル研究
春日井市の西部にキャンパスを置く中部大学は、規模としては中堅私大ですが、自然科学分野では国際的な研究アウトプットをかなり出しています。
(1) 客観指標としてのランキング・研究指標
- Nature Indexの機関プロファイルでは、中部大学は最新12ヶ月で17報の論文が上位145誌に掲載されており、日本の研究機関ランキングにも名を連ねています。
- Times Higher Education(THE)のJapan University Rankingsやアジアランキング、QS系のアジアランキングでは、いずれも下位〜中位帯ながら継続的にランクインしており、「研究力を持つ地方私大」として位置づけられています。
参考記事
https://www.nature.com/nature-index/research-leaders/2025/institution/all/all/countries-Japan
https://www.timeshighereducation.com/rankings/japan-university/2025
https://www.timeshighereducation.com/world-university-rankings/2025/regional-ranking
https://www.topuniversities.com/universities/chubu-university
https://www.universityguru.com/university/chubu-university-kasugai
→ つまり、春日井のキャンパスから出た論文が、Nature系・JACS・PNAS・JGR Atmospheresなど、世界的に評価されるジャーナルにコンスタントに載っている、という状態です。
(2) 具体的な世界レベル研究の例
いくつか、最近の代表例だけ挙げます(いずれも 中部大学の教員・研究者が共著者として名を連ねており、国際誌に掲載 されたものです)。
- 細胞外小胞(エクソソーム)と細胞接着のメカニズム
- 『Journal of Cell Biology』掲載の論文で、細胞外小胞が細胞表面にどのように接着するかを実験・数理モデルの双方から解析した研究に、中部大学の研究者が参加。nature.com
- がん・再生医療などのドラッグデリバリー研究にもつながる基礎成果として、国際的に引用されています。
- 異常原子系における軌道崩壊の理論(量子物理)
- 『Physical Review Letters』に掲載された「exotic atoms の軌道崩壊とダイナミクス」に関する論文にも中部大学の研究者が共著者として名を連ね、Nature Indexの特集で紹介されています。nature.com
- シングルセル転写データのための深層学習モデル「Mouse-Geneformer」
- 遺伝学の国際誌『PLOS Genetics』に掲載された、マウスの単一細胞トランスクリプトームを扱う深層学習モデル「Mouse-Geneformer」の論文では、中部大学が主要な所属機関の一つになっており、クロススペシーズ解析(種を超えた遺伝子発現解析)の基盤技術として注目されています。nature.com
- 地球環境・気候関連の研究
- Nature Indexの地球・環境分野の一覧を見ると、中部大学所属の論文が『Journal of Geophysical Research: Atmospheres』『Environmental Science & Technology』『PNAS』などに掲載されており、衛星データや気候モデリングを用いた日本・世界の気候・水循環に関する研究が行われています。nature.com
→ これらの研究は、
- 生命医科学(心筋細胞のカオス的ゆらぎの統計解析など)
- 物性・量子物理
- 地球・環境科学
- 計算生物学・AI
といった分野で国際共著ネットワークの中核の一部を担っており、「春日井=中部大学キャンパス」は、世界の論文データベース上でもはっきり可視化される研究拠点になっています。
■ まとめ:春日井は「多層の学術フィールド」として息づいている
春日井市を俯瞰してみると、実は一つの都市とは思えないほど、時代と分野を横断した学術資源が凝縮しています。古代の味美古墳群や松河戸遺跡群は、弥生〜古墳期の社会構造と環境復元のうえで全国的な基準資料となり、中世の密蔵院や瓦窯跡は、仏教建築史と古代生産史をつなぐ手がかりを提供します。
さらに、近代に目を向ければ、愛岐トンネル群が“市民が継承する鉄道遺産”の成功例として評価され、文化面では小野道風と道風記念館が、日本でも希少な「書の専門美術館」として存在感を放っています。
また、サボテン産地としての春日井は、農業・マーケティング・食文化の研究素材としてきわめてユニークであり、一方で中部大学を中心とした自然科学・生命科学の研究は、国際誌に継続的に成果を送り出す“世界と接続した研究拠点”となっています。
つまり春日井は、**古代史から現代科学までが一つの市域の中で連続している、稀有な「多層の学術フィールド」**と言えます。
単なる“住みやすいベッドタウン”というイメージを超えて、全国・世界とつながる知のネットワークが静かに積み重なっている—それが春日井という都市の、もう一つの姿です。
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