情報開示請求のやり方テクニック。PFAS訴訟などを通した原田芳裕の独特の技術

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私、はらだよしひろが、個人的に思ったことを綴った日記です。社会問題・政治問題にも首を突っ込みますが、日常で思ったことも、書いていきたいと思います。

目次

はじめに――情報公開請求は「資料集め」ではなく「事実構造の設計」である

情報公開請求というと、多くの人は「役所に資料を出してもらう制度」と考える。もちろん、それは間違いではない。しかし、住民訴訟や住民監査請求を見据える場合、情報公開請求は単なる資料収集では終わらない。何を争い、どの事実を立証し、行政がどこで判断し、どこで手続を省略し、どこで説明を変えたのかを明らかにするための「証拠設計」の手段になる。

私、原田芳裕の情報開示請求の特徴は、ここにある。PFAS訴訟でも、花王訴訟でも、ただ関係資料を広く求めているのではない。行政の外側に現れている結果から出発し、その背後にある判断過程、財務会計手続、契約構造、監査認定、法令上の届出義務、内部協議の痕跡を逆算して、文書の存在を追っている。

この方法は、一見するとかなり飛んでいる。普通ならそこまで請求しないだろうという文書まで取りにいく。市長・副市長への報告文書、仕様書に基づく打合せ記録簿、契約条項ごとの請求・催告・登記・違約金・使用料の根拠文書、監査が「確認した」とする事実の裏付け文書まで請求する。その発想は確かに独特である。しかし、実は極めて合理的でもある。なぜなら、行政事件や住民訴訟で重要なのは、表に出てきた結論だけではなく、その結論に至るまでの過程、権限、文書、支出、判断のつながりだからである。

本稿では、PFAS訴訟と花王訴訟に関する私の情報開示請求を素材に、「開示請求を使って訴訟の骨格を作る技術」を整理する。


全体像――二つの訴訟で見える共通構造

まず、PFAS訴訟と花王訴訟における開示請求の違いを整理すると、次のようになる。

図表1 PFAS訴訟型と花王訴訟型の違い

項目PFAS訴訟型花王訴訟型
出発点水質検査結果、非公表、追加検査報道、土地売買契約、合意解除
主な対象検査結果、支出文書、協議文書、報告文書、法定届出、監査根拠契約書、申入れ、提案書、催告、解除、買戻し、違約金、使用料、監査調書
追跡するもの行政の認識過程と追加調査の理由契約条項の履行・違反・解除・清算過程
技術の中心結果から内部協議へ遡る契約条項から存在文書を導く
訴訟上の狙い「知っていたのにどう判断したか」を証拠化する「契約・議決・財務会計処理が適法だったか」を証拠化する
特徴時系列型・認識過程型条項分解型・契約解剖型

PFAS訴訟と花王訴訟では請求の型が違う。PFASでは、検査結果や追加調査を起点に、内部の協議、報告、意思決定、支出、監査認定へと掘り進む。花王訴訟では、土地売買契約書の条項を一つずつ分解し、その条項が現実に動いたなら存在するはずの文書を請求している。

しかし、根本は共通している。それは、「行政の説明をそのまま受け取らない」という姿勢である。行政が「検査しました」「追加調査しました」「契約に基づき処理しました」「監査で確認しました」と言ったとしても、それだけでは足りない。その検査はいつ、誰の判断で、どの契約に基づき、どの費目で、どの文書を添付して、どのように支出されたのか。契約に基づく処理というなら、どの条項が発動し、どの催告があり、どの解除通知があり、どの請求書があり、どの調定決議があったのか。そこまで確認して初めて、行政の説明は検証可能になる。

私の開示請求の基本思想は、行政の言葉を、行政の文書で検証するということである。


第一の特徴――結果ではなく「過程」を取りにいく

最も大きな特徴は、結果文書だけで満足しないことである。

PFASであれば、普通はPFOS・PFOAの検査結果を請求して終わるかもしれない。町屋第3水源、町屋第6水源、町屋送水場の数値がどうだったか。それ自体は重要である。しかし、それだけでは訴訟にならない。住民訴訟で問題になるのは、単に数値が高かったことではなく、行政がその数値をどう受け止め、なぜ公表しなかったのか、なぜ追加調査をしたのか、その追加調査の支出はどのような法的・財務的根拠をもっていたのか、という点である。

そこで私は、検査結果だけでなく、追加調査を依頼するに至った協議の内容がわかる文書、打合せ記録簿、市長・副市長との調整メモに基づく報告文書、監査が確認したとする事実の裏付け文書まで請求している。これは、行政の「結果」ではなく「過程」を取りにいく請求である。

花王訴訟でも同じである。花王との土地売買契約が合意解除された、違約金や使用料が控除された、という結論だけを見ても、本当の問題は見えない。重要なのは、その合意解除に至るまでに、契約上の義務違反がどのように認定され、履行催告がされたのか、解除の要件が満たされたのか、買戻しなのか合意解除なのか、使用料や違約金の請求根拠はどこにあるのか、議会議決を要する財産処分に当たるのではないか、という一連の構造である。

このように、私の情報開示請求は、表面に現れた一枚の文書を求めるものではない。むしろ、その文書が作られる前後に存在するはずの行政行為の連鎖を追っている。

図表2 「結果取得型」と「過程再構成型」の違い

請求の発想得られるもの弱点・強み
結果取得型結果文書を求める検査結果、契約書、合意書などわかりやすいが、行政の判断過程が見えにくい
過程再構成型結果に至る前後の文書を求める協議記録、報告文書、支出文書、催告、調定、監査根拠手間はかかるが、訴訟で事実構造を組み立てやすい

私の技術は明らかに後者である。結果文書を出発点にしながら、そこから行政の内部過程を復元しようとしている。


第二の特徴――文書の存在を「制度」から逆算する

次の特徴は、文書の存在を単なる勘で探していないことである。

PFASでは、水質検査業務委託仕様書に「打合せ記録簿を提出すること」といった記載があれば、それを根拠に追加調査における打合せ記録簿を請求している。つまり、「たぶんあるだろう」ではない。「仕様書上、提出することになっているのだから、存在するはずだ」という論理である。

また、水道法に基づく登録検査機関への委託であれば、水道法上の届出文書が存在するのではないかと考える。水質汚濁防止法上の届出や検査報告も、PFASの発生源や事業所との関係を考えるうえで重要になる。ここでも、単に「PFASに関係する文書を全部ください」と言っているわけではない。法令上、行政が把握しているはずの文書、または把握していなければおかしい文書を狙っているのである。

花王訴訟では、この技術がさらに明確に現れている。土地売買契約書の第3条、第4条、第5条、第6条、第8条、第12条、第17条、第18条、第19条、第20条、第21条、第22条、第23条といった条項ごとに、その条項が現実に機能したなら存在するはずの文書を請求している。契約保証金が振り込まれたなら振込文書と調定決議書があるはずである。売買代金の差額が納付されたなら請求書と納付文書があるはずである。所有権移転登記がされたなら登記請求と嘱託文書があるはずである。義務違反を理由に解除したなら履行催告、解除通知、違反事由を証する文書があるはずである。違約金や使用料を請求したなら、その請求文書があるはずである。

これは非常に合理的である。行政に対して「何かありませんか」と聞いているのではない。こちらが契約書を読み込み、「この条項が現実に動いたなら、この文書があるはずだ」と特定して請求している。行政が不存在と答えた場合でも、その不存在自体が意味を持つ。条項が動いたはずなのに文書がない、または文書がないのに条項が動いたことにされている、という矛盾が生まれるからである。

図表3 文書存在の逆算モデル

根拠そこから導く文書請求の意味
仕様書打合せ記録簿、提出書類委託業務が仕様どおり行われたかを確認する
水道法・水質汚濁防止法届出、報告、検査関係文書行政の法令上の把握範囲を確認する
契約条項請求書、催告書、解除通知、登記嘱託、違約金請求契約上の要件が本当に満たされたかを確認する
監査結果監査が確認した根拠文書監査認定の土台を検証する

この発想は、情報公開請求を「文書探し」から「制度分析」に変える。行政文書は偶然存在するものではない。法令、契約、仕様書、決裁規程、会計規則、監査手続の中で作られる。だからこそ、制度を読めば、存在するはずの文書が見えてくる。


第三の特徴――請求が連鎖している

私の開示請求は、単発では終わらない。ある文書を取得すると、その文書の中にある記載から次の請求を組み立てる。これはかなり重要な特徴である。

PFASでは、歳出執行管理表に「協議済」といったメモがあれば、その協議の内容がわかる文書を請求する。仕様書に打合せ記録簿の提出義務があれば、その記録簿を請求する。市長副市長調整メモに「結果がわかったらすぐ報告してください」とあれば、その報告文書を請求する。監査結果に「職員に説明を求めた」「確認した事実」と書かれていれば、その説明を求めた文書、確認の根拠文書を請求する。

花王訴訟でも、最初は新聞記事を入口にして、契約書、延期申入れ、再申入れ、計画書提出要求、建設条件確認、計画中止報告、違約金請求根拠を求めている。その後、契約書そのものを読み込み、条項別に文書を請求する。さらに合意解除の合意書を請求し、監査段階では住民監査調書や添付資料を請求する。つまり、報道から契約へ、契約から条項へ、条項から財務会計へ、財務会計から監査へと、請求が連鎖している。

図表4 原田式・連鎖型開示請求の流れ

段階PFAS訴訟花王訴訟
第1段階検査結果を取る報道を入口に関係文書を取る
第2段階追加調査・支出文書を取る契約書を取る
第3段階協議・打合せ・報告文書を取る契約条項ごとに文書を分解して取る
第4段階法定届出・周辺資料を取る合意書・清算文書を取る
第5段階監査の根拠文書を取る監査調書・添付資料を取る
最終目的行政の認識過程を再構成する契約処理と財務会計処理を再構成する

この連鎖型の強みは、行政側の説明を一回ごとに検証できることである。一つの開示文書から、次に存在するはずの文書が見える。次の文書を取ると、さらに別の手続や別の判断者が見える。これを繰り返すことで、行政の説明の輪郭がだんだん明確になる。

裁判所は抽象的な疑念では動かない。「不自然だ」「おかしい」というだけでは足りない。どの文書があり、どの文書がなく、どの手続が踏まれ、どの手続が踏まれていないのかを具体的に示す必要がある。連鎖型の開示請求は、その具体性を作るための技術である。


第四の特徴――行政の「言い換え」を許さない

行政は、問題が起きたときに言葉を変えることがある。PFASであれば、検査結果、追加調査、公表、再採水、安全性、基準値、暫定目標値、監査上の確認といった言葉が使われる。花王訴訟であれば、契約解除、合意解除、買戻し、違約金、使用料、返還、清算、予算、議決といった言葉が使われる。

ここで重要なのは、言葉の違いが法的意味の違いにつながることである。たとえば「合意解除」と「買戻し」は同じではない。「違約金」と「損害賠償」も同じではない。「会費」と「交際費」が同じでないように、「契約に基づく処理」と言っても、それがどの条項に基づくのかによって法的評価は変わる。

私の開示請求は、行政の言い換えを許さない構造になっている。PFASでは、単に「追加調査」と呼ばれたものについて、なぜ追加調査が必要になったのか、誰と協議したのか、仕様書上の打合せ記録簿はあるのか、支出負担行為決議書はどうなっているのかを問う。花王では、単に「契約に基づき違約金を求める」という説明に対して、契約書第何条のどの事由が発生したのか、その事由を証する文書は何か、履行催告はしたのか、解除通知はあるのか、使用料相当額の請求はしたのかを問う。

これにより、行政は曖昧な総称で逃げにくくなる。「契約に基づく」と言うなら、どの契約条項か。「確認した」と言うなら、何をもって確認したのか。「協議した」と言うなら、協議記録はどこにあるのか。「支出した」と言うなら、支出負担行為決議書と添付資料はどうなっているのか。言葉を文書に戻すことで、行政の説明を検証可能な形に引き戻しているのである。


第五の特徴――財務会計行為へ接続する

住民訴訟では、最終的に財務会計行為との接続が重要になる。ここを意識していない開示請求は、どれだけ興味深い資料を集めても、訴訟上は弱くなることがある。

PFAS訴訟で私が強く意識したのは、追加調査が単なる水質管理上の行為ではなく、支出を伴う財務会計行為でもあるという点である。だからこそ、検査結果だけでなく、支出負担行為決議書、請書、仕様書、委託契約、支出に関わる文書を求めた。追加調査の必要性、契約のあり方、支出の根拠、当該職員の権限、事前の認識過程をつなげるためである。

花王訴訟では、さらに財務会計行為への接続が強い。売買代金、契約保証金、差額納付、調定決議書、延滞金、違約金、使用料相当額、損害賠償、買戻し額、合意解除に伴う清算。これらはすべて、自治体の財産・収入・支出に関わる。したがって、契約の問題を私法上の契約解釈だけに閉じず、地方自治体の財務会計上の統制へ接続している。

図表5 情報公開請求から住民訴訟への接続

開示請求で取るもの訴訟での意味
検査結果行政が把握していた危険性・事実認識
協議記録・報告文書誰が、いつ、何を認識し、どう判断したか
支出負担行為決議書財務会計行為の存在と手続
契約書・仕様書支出や委託の法的根拠
契約条項別文書義務違反、解除、違約金、使用料の要件
調定決議書・請求書自治体の債権管理・収入処理
監査調書・添付資料監査認定の根拠と限界

このように、私の情報公開請求は、最初から訴訟の請求原因や違法性主張に接続するように組まれている。これは、訴訟の準備書面を作る前段階で、必要な事実を行政文書から掘り起こす作業である。


第六の特徴――広く取り、狭く刺す

私の請求には、一見すると広い請求と、非常に狭い請求が混在している。

PFASでは、令和3年4月から令和5年12月までの全配水場・水源・ポンプ場におけるPFOS・PFOA検査記録を求めるような広い請求がある。一方で、令和5年8月21日の町屋第3水源、町屋第6水源、町屋送水場の追加調査に関する協議文書、あるいは市長・副市長調整メモの特定記載に基づく報告文書を求めるような狭い請求もある。

花王訴訟でも、最初は新聞記事をもとに関係文書を広く取りにいく。その後、契約書の条項ごとに、非常に精密な文書特定をしている。つまり、最初に全体像を把握するために広く取り、その後、争点に必要な部分を狭く刺すのである。

図表6 「広く取る」と「狭く刺す」の使い分け

請求の幅目的
広い請求全体像、時系列、比較対象、背景事情を把握する全水源・全配水場のPFAS検査記録、報道を元にした花王関係文書
中間の請求争点周辺の文書群をまとめて取る支出負担行為決議書、仕様書、契約関係文書
狭い請求訴訟上の要件事実に直結する一点を刺す市長への報告文書、履行催告、解除通知、違約金請求、監査確認根拠

この使い分けは重要である。最初から狭く刺しすぎると、全体像が見えない。逆に、広く取るだけでは争点がぼやける。広く取って、そこから狭く刺す。この往復が、原田式の情報公開請求の大きな特徴である。


第七の特徴――監査を「終点」ではなく「次の入口」にする

住民監査請求をすると、多くの場合、監査結果が出たところで一区切りになる。しかし、私の方法では、監査結果は終点ではない。むしろ、次の開示請求の入口になる。

PFASでは、監査結果に「職員に説明を求めた」「確認した事実」と書かれていれば、その説明を求めた文書、確認した根拠文書を請求する。これは、監査委員がどの資料に基づいて判断したのかを検証するためである。監査結果は行政側の認定である以上、その認定基礎を確認しなければならない。

花王訴訟でも、住民監査調書や添付資料を求めている。これは、監査段階でどの文書が提出され、どの事実が確認され、どの点が見落とされたのかを検証するためである。監査の判断が妥当かどうかは、監査結果の文章だけを読んでもわからない。監査が見た資料、見なかった資料、行政が説明した内容、説明しなかった内容を確認する必要がある。

これは非常に重要な発想である。監査結果を批判するには、監査結果の結論だけを批判しても弱い。監査の認定過程に踏み込み、「その確認は何に基づくのか」「その文書で本当にそこまで言えるのか」「確認すべき文書を確認していないのではないか」と問う必要がある。情報公開請求は、そのための道具になる。


第八の特徴――不存在回答すら証拠化する

情報公開請求では、文書が開示されることだけが成果ではない。不開示、不存在、部分開示も重要な情報である。

原田式の開示請求では、この点が特に重要になる。なぜなら、こちらは法令、契約、仕様書、監査結果から「存在するはずの文書」を特定しているからである。その文書が不存在とされた場合、単に「取れなかった」で終わらない。「存在するはずなのに存在しないのはなぜか」という新たな問題になる。

たとえば、仕様書に打合せ記録簿の提出が定められているのに、追加調査の打合せ記録簿がないとされた場合、委託業務が仕様書どおりに履行されたのかという疑問が生じる。契約条項上、履行催告や解除通知が問題になるのに、その文書がないとすれば、本当に契約上の解除要件を踏んだのかという疑問が生じる。監査が「確認した」と言っているのに、確認根拠文書が出てこなければ、監査認定の基礎が問われる。

つまり、原田式の開示請求では、「文書が出る」ことも成果であり、「文書が出ない」ことも成果になりうる。これはかなり上級の発想である。存在する文書を集めるだけでなく、存在しないことの意味まで訴訟構造に組み込むのである。

図表7 不存在回答の活用

不存在とされた文書生じる問い
打合せ記録簿仕様書どおりに業務管理されていたのか
市長への報告文書市長は本当に報告を受けたのか、口頭だけだったのか
履行催告文書契約解除の前提手続は踏まれたのか
違反事由を証する文書違約金・解除の根拠事実は本当にあったのか
監査確認根拠文書監査委員は何を根拠に事実認定したのか

このように、不存在回答を恐れない。むしろ、不存在回答によって行政の手続の空白が見えることがある。


第九の特徴――行政文書を「証拠の地図」に変える

私の開示請求を一言で言うなら、行政文書を証拠の地図に変える技術である。

PFASでは、検査結果だけを見ると、点である。しかし、そこに支出負担行為決議書、仕様書、請書、協議記録、打合せ記録簿、市長副市長調整メモ、監査確認文書、水道法上の届出、水質汚濁防止法上の届出を重ねると、点が線になり、線が面になる。行政がいつ知り、誰が判断し、どの部署が動き、どの契約で支出し、どのように説明したかが地図のように見えてくる。

花王では、契約書だけを見ると、条文の羅列である。しかし、条文ごとに対応する文書を集めると、契約の履行過程が地図になる。契約保証金、売買代金、都市計画法上の協議、所有権移転登記、提案書、変更協議、報告要求、催告、解除、買戻し、返還、違約金、使用料、損害賠償。これらが一枚の流れとして見えれば、どこに法的問題があるのかも見えてくる。

図表8 原田式・証拠地図の作り方

作業内容
点を取る検査結果、契約書、合意書などの中心文書を取る
線を引く時系列、協議、報告、支出、契約条項をつなぐ
面にする法令、財務会計、監査、議決、契約構造を重ねる
空白を見る文書がない部分、説明が飛ぶ部分、手続が抜ける部分を確認する
訴訟に変換する違法性、裁量逸脱、財務会計行為、当該職員性、議決欠缺へ接続する

この「地図化」の技術が、私の情報公開請求の核である。行政の文書は、一枚ずつ見ているだけでは意味がわからないことがある。しかし、文書同士をつなぐと、行政の行動が見える。逆に、つながらない部分が見える。そこに訴訟上の争点が生まれる。


なぜ「飛んでいる」のに合理的なのか

自分で言うのも変だが、私の開示請求は発想が飛んでいると思う。普通なら、PFASの水質検査の問題で、市長副市長調整メモから報告文書を取りにいったり、水道法上の届出や水質汚濁防止法上の事業所届出まで見にいったりしないかもしれない。花王の土地売買契約の問題で、契約条項を一つずつ分解し、第3条から第23条まで、各条項に対応する文書を請求する人も多くはないだろう。

しかし、この発想は奇抜であっても、無秩序ではない。むしろ非常に合理的である。

なぜなら、行政は必ず何らかの制度の中で動くからである。水質検査なら水道法、委託契約、仕様書、支出手続、内部協議、監査手続がある。土地売買契約なら契約条項、都市計画法、登記、議会議決、財務会計、債権管理、住民監査がある。行政の行動は、これらの制度のどこかに痕跡を残す。だから、その痕跡を制度の側から探しにいくのは合理的なのである。

むしろ、表に出ている説明だけを信じる方が危うい。行政は、説明しやすい言葉で説明する。しかし、訴訟で必要なのは、説明しやすい言葉ではなく、検証可能な文書である。私の開示請求は、行政の言葉を信用しないのではない。行政の言葉を行政の文書で確かめるのである。

ここに、情報公開請求の本来の力がある。情報公開制度は、行政を信じるための制度ではない。行政を疑うためだけの制度でもない。行政の説明を、文書によって検証可能にする制度である。


原田式情報公開請求の技術一覧

ここで、私の技術を一覧化しておく。

図表9 原田式情報公開請求テクニック

技術名内容具体例
結果から過程へ遡る技術結果文書の背後にある協議・報告・判断を取るPFAS追加調査の協議文書、市長報告文書
制度から文書を逆算する技術法令・仕様書・契約条項から存在文書を導く打合せ記録簿、契約条項別文書
連鎖型請求取得文書の記載を次の請求に使うメモ、仕様書、監査結果から次の文書を請求
条項分解型請求契約書を条項ごとに解剖する花王土地売買契約の第3条~第23条(クリックすると条文にいけます。)
財務会計接続支出・収入・調定・請求に接続する支出負担行為決議書、調定決議書、違約金請求
監査根拠追跡監査が確認した事実の根拠を請求する監査対象部局調査、確認事実の根拠文書
不存在活用出ない文書の意味を争点化する催告書不存在、打合せ記録簿不存在
広狭併用広い請求とピンポイント請求を使い分ける全水源検査記録と特定日の協議文書
言葉の固定化行政の曖昧な説明を条項・文書に戻す合意解除、買戻し、違約金、使用料の区別
証拠地図化文書群を時系列・法令・財務会計で結ぶPFAS行政過程、花王契約清算過程

この一覧から見えるのは、私の開示請求が単なる網羅型ではないということである。むしろ、網羅する部分と絞る部分、背景を取る部分と急所を刺す部分がある。広く取って、狭く刺す。制度から文書を導き、文書から次の制度へ進む。この往復が特徴である。


弱点もある――高度すぎるがゆえの課題

もちろん、この方法には弱点もある。

第一に、請求が複雑になりやすい。行政側が文書特定に迷う可能性がある。特に、複数の条項や複数の法令を絡めると、担当課が「何を求められているのか」を理解しきれないことがある。その場合、請求者側が補正を求められたり、不存在判断が粗くなったりする危険がある。

第二に、情報量が多くなりすぎる。多くの文書が出ると、読む側も整理しなければならない。開示請求は取って終わりではなく、取った後に分析する力が必要である。原田式は、この分析力を前提にしている。

第三に、裁判所に伝えるときには、さらに翻訳が必要になる。情報公開請求の段階では非常に鋭い問いであっても、裁判所には「だから何が違法なのか」を簡潔に示さなければならない。文書の山をそのまま出すだけではなく、要件事実、財務会計行為、裁量逸脱、議決欠缺、当該職員性などに整理し直す必要がある。

ただし、この「高度な整理」といっても、基本は決して複雑ではない。むしろ、発想の根本はシンプルである。行政の行為や支出を、法令、条例、規則、契約書、仕様書、会計手続、監査手続に照らし合わせる。そして、その基準から外れている部分、手続が飛んでいる部分、文書が存在しない部分、説明と文書が一致しない部分を見つける。それが違法性の入口になる。

つまり、開示された文書を前にして行うべきことは、特別な魔法ではない。まず、行政が「何をしたのか」を文書から確認する。次に、その行為について「本来は何をしなければならなかったのか」を法令や契約条項から確認する。そして、現実の行政行為と、本来あるべき手続・権限・判断・文書とのズレを見る。そのズレが、財務会計上の違法性、裁量権の逸脱・濫用、議決欠缺、契約上の要件不充足、当該職員の責任などへ接続していく。

したがって、原田式の情報公開請求は、表面的には非常に高度で複雑に見えるかもしれない。しかし、その中心にある考え方は、「法令などに照らして、行政の行為が適法に説明できるかを見る」という極めて基本的な作業である。むしろ、高度なのは結論ではなく、そこに至るために必要な文書を、あらかじめ逆算して取りにいく点にある。文書を取った後の整理も、最終的には「基準」と「現実」を照合し、その差異を違法性として構成するだけである。

しかし、これらは致命的な弱点ではない。むしろ、上級の情報公開請求に必然的についてくる課題である。高度な請求をするなら、高度な整理が必要になる。ただし、その高度な整理の根本は、決して難解なものではない。法令、契約、会計規則、監査手続という基準に照らして、行政の行為が本当に適法だったのかを一つずつ確認する。その積み重ねにすぎないのである。


市民が行政を検証するための技術として

私の情報開示請求は、個人的な訴訟技術であると同時に、市民が行政を検証するための技術でもある。

行政は巨大である。市民は行政内部の会議に参加できない。決裁文書も、協議記録も、支出負担行為決議書も、契約書の添付資料も、監査調書も、普通に生活していれば見ることはない。しかし、行政は市民の税金で動き、市民の生活に影響を与える。水道水の安全性も、市有地の売買も、契約解除に伴う巨額の清算も、本来は市民が検証できなければならない。

情報公開請求は、そのための制度である。しかし、ただ「関係資料一式」と書くだけでは、行政の構造は見えてこない。必要なのは、行政の仕組みを読み、文書の存在を予測し、過程を再構成し、財務会計へ接続し、監査の根拠まで追う技術である。

この技術は、弁護士だけのものではない。市民でも使える。もちろん、簡単ではない。法令を読み、契約書を読み、会計手続を読み、行政の文書管理の癖を読む必要がある。しかし、だからこそ意味がある。市民が行政を検証する力を持つことは、民主主義の基礎だからである。


おわりに――情報公開請求は、行政の「見えない構造」を見える形に変える

PFAS訴訟と花王訴訟を通して見えてきた私の情報公開請求の特徴は、単なる資料収集ではない。

それは、行政の結果から過程へ遡る技術であり、法令・仕様書・契約条項から存在文書を逆算する技術であり、取得文書を足場に次の請求へ進む連鎖型の技術であり、行政の曖昧な説明を文書と条項に戻す技術であり、財務会計行為へ接続する訴訟準備の技術である。

確かに、発想は飛んでいるかもしれない。しかし、その飛び方には理由がある。行政の構造は一枚の文書では見えない。表に出ている説明だけでは見えない。だから、複数の制度をまたぎ、複数の文書をつなぎ、存在する文書と存在しない文書の両方から、行政の動きを再構成する必要がある。

情報公開請求とは、単に文書をもらう制度ではない。行政の見えない構造を、市民の側から見える形に変える制度である。私の開示請求技術は、その制度を訴訟の中で最大限に使い切ろうとする試みである。

そして、この技術の本質は、疑うことではない。怒ることでもない。行政の説明を、行政自身の文書で検証することである。そこに、情報公開請求の本当の力がある。

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