日本国憲法 改正案(原田芳裕案)
目次
日本国憲法 改正草案 全文
前文
日本国民と日本国は、恒常な平和を希求し、互いを尊重しあい、我が国と我が国民が、諸国及び諸国民と手を携えた協和による国際社会全体の発展に永久に尽力するために、この憲法を定める。
この憲法が定める基本的人権は、人格の尊重を最大限に認め、国政が国民ひとりひとりに由来し、互いの違いを尊重し、人間らしい生活を営むために惜しみない智恵を出し合い、社会全体の幸福を実現する為に保障するものである。故に基本的人権は何人も侵すことができないものであり、これに反する一切の憲法、法令、及び詔勅は排除される。また国民は、自己の幸福・家族の幸福・コミュニティーの幸福・地域の幸福・国全体の幸福・国際社会全体の幸福実現に邁進するために基本的人権を享受することを忘れてはならない。
その為には、国民ひとりひとりが、自己の幸福だけではなく、日本社会から国際社会の全体の幸福までも考えて・創造し、行動することが不可欠である。
その上で、ひとりひとりが家族・コミュニティー・地域・社会の発展の為に精進し、互いを尊重しあい、皆が自己成長し続ける社会を築いてこそ、智恵に溢れ、いかなる困難でさえも平和と愛情と慈愛に支えられた幸福な世界へと変えることができると信ずる。その理想世界の実現の為に、日本国民は無限大の努力を尽くすことを喜びとする。
この憲法がはじめて制定された時、私たちの先祖は、こう決意した。
「日本国民は、正当に選挙された国会における代表者を通じて行動し、われらとわれらの子孫のために、諸国民との協和による成果と、わが国全土にわたつて自由のもたらす恵沢を確保し、政府の行為によつて再び戦争の惨禍が起ることのないやうにすることを決意し、ここに主権が国民に存することを宣言し、この憲法を確定する。」
今を生きている私たちは、先人たちのこの覚悟の上に、自由と平和を享受することを決意する。もし、ひとりでも自由と平和を享受できていない人間が一人でもいたら、私たちは未だ道半ばである。人権の保障、国際平和の確立は、確固たる国民主権によってのみ成し得ることを肝に命ずべきである。それは同じ日本国民や諸国民に対する慈愛を自ら育てることによって得られるのである。
つまり、国民ひとりひとりが、我が国の主人公なのである。そもそも国政は、国民の厳粛な信託によるものであって、その権威は国民に由来し、その権力は国民の代表者がこれを行使し、その福利は国民がこれを享受する。これは人類普遍の原理であり、この憲法は、かかる原理に基くものである。
何人も国の在りようや社会の在りようについて積極的に関わることで、国の権威が固まるのである。そして、この国全体の幸福は、国民ひとりひとりの厳粛な幸福追求によって、高まるのである。
だからこそ、私たち日本国民は、恒久の平和を念願し、人間相互の関係を支配する崇高な理想を深く自覚するのであって、平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意したのである。それは不変の決意である。私たちは、平和を維持し、専制と隷従、圧迫と偏狭を地上から永遠に除去しようと努めてゐる国際社会において、名誉ある地位を占めたいと思ふ。そして私たち日本国民は、全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免かれ、平和のうちに生存する権利を有することを確認する。
私たちは、いづれの国家も、自国のことのみに専念して他国を無視してはならないのであって、政治道徳の法則は、普遍的なものであり、この法則に従ふことによって、自国の主権を維持し、他国と対等関係に立たうとする各国の責務であると信じてきた。
だからこそ、私たち日本国民は、これからも国家の名誉にかけ、全力をあげてこの崇高な理想と目的を達成することを誓い、邁進していく。
第1章 国民主権
〔主権在民と、その徹底原則〕
第1条 日本国の主権は日本国民に存する。このことは、この憲法が理念とする基本的人権の尊重と保障、戦争の放棄、平和主義を永続的にさせるために、徹底されなければならない。
第2章 元首及び天皇
〔天皇の地位とその根拠〕
第2条①天皇は主権の存する国民の信頼によってのみ、象徴としての元首の地位を有する。天皇の地位の継承は、法律によって定められる。
②この憲法は、前項の地位を保障するため、天皇及び皇族に対しては、財産権を制限し、参政権を有することを認めない。その他の基本的人権についても、この憲法が要請する範囲で制限する。
③何人も、天皇や皇族を、信条や政治的目的の達成の為に利用してはならない。
④この憲法は、元首の地位の保障と国民の信頼の一形態として、何人も天皇や皇族への批判を行う権利を有することを保障する。
〔元首としての天皇の行為に対する国会の助言と承認及び内閣の責任〕
第3条 元首としての天皇の行為には、国会の助言と承認を必要とし、内閣が国会の代理としてその責任を負う。
〔天皇の権能と権能行使の委任〕
第4条①天皇は、主権の存ずる日本国民の信頼により元首としての地位を有しているがゆえに、国政に関する権能を有しない。
②天皇は、この憲法が定める行為のみを行う。
③天皇は、国会が承認した範囲に限って、その国事に関する行為を委任することができる。
〔天皇の任命行為〕
第5条①天皇は、国会の指名に基いて、内閣総理大臣を任命する。
②天皇は、国会の指名に基いて、最高裁判所の長たる裁判官を任命する。
〔天皇の国事行為〕
第6条①天皇は、国会の承認と内閣の助言により、元首として左の国事に関する行為を行ふ。
- 一 憲法改正、法律及び条約を公布すること。
- 二 国会を召集すること。
- 三 衆議院を解散すること。
- 四 国会議員の総選挙の施行を公示すること。
- 五 大赦、特赦、減刑、刑の執行の免除及び復権を認証すること。
- 六 栄典を授与すること。
- 七 批准書及び法律の定めるその他の外交文書を認証すること。
②天皇は、内閣の承認と助言により、元首として左の国事に関する行為を行ふ。
- 一 国務大臣及び法律の定めるその他の官吏の任免並びに全権委任状及び大使及び公使の信任状を認証すること。
- 二 外国の大使及び公使を接受すること。
- 三 儀式を行ふこと。
- 四 政令を公布すること
③天皇は、選挙で決められた結果をもって、元首として左の国事に関する行為を行う
- 一 地方自治体の首長の任命
〔皇位の継承及び摂政〕
第7条①天皇の地位の継承は、国会の議決した皇室典範の定めるところによる。
②皇室典範の定めるところにより摂政を置くときは、摂政は、天皇の名で元首としての行為を行ふ。
〔財産授受の制限と皇室予算〕
第8条①皇室に財産を譲り渡し、又は皇室が、財産を譲り受け、若しくは賜与することは、国会の議決に基かなければならない。
第2章 平和主義
第2章の1 戦争の放棄と自衛権
〔戦争の放棄と戦力保持及び交戦権の否認〕
第9条①日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、永久にこれを放棄する。また、日本国は交戦権を放棄する。
②前項の目的を達するため、国際紛争を解決する手段としての全ての戦力を保持してはならない。
〔自衛権とその範囲〕
第10条①日本国は、自国の領土・領海・領空・国民を守る為にのみ、自衛権を有する。
②日本国は、他国や他国民が武力による威嚇又は武力の行使を日本国及び日本国民に対して行ってきた場合にのみ、自衛権を行使できる。但し、自衛権の行使は前条及び前項の定める範囲を超えてはならず、また、自衛権の行使を理由とした事実上の交戦権も認めない。
③前々項の為の機関として自衛隊を設置する。自衛隊の規模は必要最小限にとどめる。但し、自衛隊への指揮監督権は内閣ではなく、国会のしかも参議院の一委員会である防衛委員会が有する。
④自衛隊に関する全ての情報は、組織、装備、技術、仕様、取引、諸外国との取り決め等も含めて、制限無く日本国民に開示されなければならず、いかなる機密も有してはならない。
⑤何人も、徴兵や自衛権行使を理由とした動員を強制されない。
⑥集団的自衛権については、前条の目的を達する為、武力による威嚇や武力の行使は行ってはならない。また、武力による威嚇や武力の行使を支援する行為も行ってはならない。
第2章の2 国際紛争の平和的解決、核兵器保有の禁止及び兵器売買の禁止
〔国際紛争の平和的解決の義務〕
第11条①日本国政府、国会及び日本国民は、武力の行使や武力による威嚇を伴わない平和的手段による国際紛争の解決を希求し、そのことに誇りをもち、実現させる義務を負う。
②前項の義務を遂行するため、何人も他国や他国民に対する攻撃・侮辱・その他人権を侵害する信条・思想の表出と実行をしてはならない。
〔核兵器保有及び原子力などの平和的利用の禁止〕
第12条①この憲法は、核兵器の保有・製造・開発は禁止する。また、核兵器に転換できる技術の開発・利用も禁止する。
②この憲法は、原子力などの核兵器や大量破壊兵器につながる技術の平和的利用を禁止する。また、核兵器や大量破壊兵器を根源とした技術の平和的利用を禁止する。
〔兵器売買と兵器保有の禁止〕
第13条①何人も兵器の売買を行ってはならず、また、兵器の保有をしてはならない。
②前項に関しては、自衛隊が必要最低限の兵器を要する範囲内である場合を除く。但し、その売買に関しては国会の承認が必要で、取引に関する情報は全て国民に開示されなければならない。
③不適切な兵器の取引は無効とし、かかる取引によって製造・配置・保有された兵器は速やかに廃棄されなければならない。
④第13条2項に抵触する施設・機械等が製造されたことが明らかになったときは、該当する施設・機械等は廃棄されなければならない。
第3章 国民の権利及び義務
〔国民たる要件〕
第14条①日本国民たる要件は、法律でこれを定める。
② 日本国民は、事実上の重国籍であることを理由に、この憲法が定める権利や保障から排除されない。
〔基本的人権〕
第15条①日本国民は、すべての基本的人権の享有を妨げられない。この憲法が国民に保障する基本的人権は、侵すことのできない永久の権利として、現在及び将来の国民に与へられる。
②日本国民以外の外国人は、基本的人権を享有する。また、彼らの参政権については、日本国の国籍を有していなくても、永住権など日本国の社会を構成すると認められる場合は付与する。
〔自由及び権利の保持義務と公共福祉性〕
第16条 この憲法が国民に保障する自由及び権利は、国民の不断の努力によって、これを保持しなければならない。又、国民は、これを濫用してはならないのであって、常に公共の福祉のためにこれを利用する責任を負う。
〔個人の尊重と公共の福祉 人格権〕
第17条①すべての人は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。
②すべての人は個人として尊重されるがゆえに人格を有するのであり、何人も故意・過失を問わず他人から人格を侵害されることはない。
〔平等原則、貴族制度の否認及び栄典の限界〕
第18条①すべて国民は、法の下に平等であって、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されず、生命や身体及び精神を脅かされない。
② 華族その他の貴族の制度は、これを認めない。
③ 栄誉、勲章その他の栄典の授与は、いかなる特権も伴はない。栄典の授与は、現にこれを有し、又は将来これを受ける者の一代に限り、その効力を有する。
〔公務員の選定罷免権、公務員の本質、普通選挙の保障及び投票秘密の保障〕
第19条①公務員を選定し、及びこれを罷免することは、主権の存ずる国民の固有の権利である。
② すべて公務員は、全体の奉仕者であって、一部の奉仕者ではない。
③ 公務員の選挙については、成年者による普通選挙を保障する。
④ すべて選挙における投票の秘密は、これを侵してはならない。選挙人は、その選択に関し公的にも私的にも責任を問はれない。
〔請願権〕
第20条何人も、損害の救済、公務員の罷免、法律、命令又は規則の制定、廃止又は改正その他の事項に関し、平穏に請願する権利を有し、何人も、かかる請願をしたためにいかなる差別待遇も受けない。
〔公務員の不法行為による損害の賠償〕
第21条何人も、公務員の不法行為により、損害を受けたときは、法律の定めるところにより、国又は公共団体に、その賠償を求めることができる。
〔奴隷的拘束及び苦役の禁止〕
第22条①何人も、いかなる奴隷的拘束も受けない。又、犯罪に因る処罰の場合を除いては、その意に反する苦役に服させられない。
②何人も自衛権のために、徴兵・苦役・動員などの拘束を強制されない。また、自衛隊に直接又は間接的に従事したことにより、苦役に服させられたり、人権侵害や不法行為、法令違反行為の強制を受けた場合は、法律の定めるところにより、国に賠償を求めることができ、当該行為者に対する刑罰又は処分を求めることが出来る。この権利は緊急事態時においても同様とする。
〔思想及び良心の自由〕
第23条思想及び良心の自由は、これを侵してはならない。
〔信教の自由〕
第24条①信教の自由は、何人に対してもこれを保障する。いかなる宗教団体も、国から特権を受け、又は政治上の権力を行使してはならない。
② 何人も、宗教上の行為、祝典、儀式又は行事に参加することを強制されない。
③ 国や地方自治体及びその機関は、宗教教育その他いかなる宗教的活動もしてはならない。また、国や地方自治体とその機関は、宗教団体の活動を補助する行為も行ってはならず、特定の宗教団体に儀式や合祀を依頼若しくは斡旋や推薦をしてはならない。本項の内容には、宗教的形式も含む。
〔集会、結社及び表現の自由と通信秘密の保護〕
第25条①集会、結社及び言論、報道、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する。
②人種・障害・性・門地・出自などに対する差別や侮蔑、人格侵害などの信条の表出は前項の保障を制限される。
③検閲は、これをしてはならない。通信の秘密は、これを侵してはならない。
④国務大臣・議員・首長及び国や国の機関又は公共機関は、言論、報道、出版その他一切の表現の自由に対して、介入してはならず、自主規制を求めてもならない。
⑤国や国の機関又は公共機関は、言論及び報道の自由に関して、国政や地方自治に関する情報を知る権利への最大限の配慮をしなければならない。
〔居住、移転、職業選択、外国移住及び国籍離脱の自由〕
第26条①何人も、公共の福祉に反しない限り、居住、移転及び職業選択の自由を有する。
②何人も、人種・障害・門地・社会的身分などを理由として他人の居住、移転及び職業選択の自由を妨げてはならない。
③何人も、外国に移住し、又は国籍を離脱する自由を侵されない。
〔学問の自由〕
第27条学問の自由は、これを保障する。
〔家族関係における個人の尊厳と両性の平等 夫婦別姓選択権〕
第28条①婚姻は、両性の合意のみに基いて成立し、夫婦が同等の権利を有することを基本として、相互の協力により、維持されなければならない。
②配偶者の選択、財産権、相続、住居の選定、離婚並びに婚姻及び家族に関するその他の事項に関しては、法律は、個人の尊厳と両性の本質的平等に立脚して、制定されなければならない。
③夫婦は同一姓であるか、別姓であるか選択できる。
〔生存権及び国民生活の社会的進歩向上に努める国の義務〕
第29条①すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。
②国は、すべての生活面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない。
〔教育を受ける権利と受けさせる義務〕
第30条①すべて国民は、法律の定めるところにより、その能力に応じて、ひとしく教育を受ける権利を有する。
②すべて国民は、法律の定めるところにより、その保護する子女に普通教育を受けさせる義務を負う。義務教育は、これを無償とする。
③国や公共機関が運営する高等教育及び大学教育は無償とする。
④奨学金については無利子とし、負担が将来の生活設計を脅かさないようにしなければならない。
〔憲法教育の義務〕
第31条 義務教育及び高等教育においては、全ての児童・生徒・学生が現在若しくは将来において自発的にこの憲法を遵守するために、この憲法が定める基本的人権や権利、国会や国、地方自治や裁判所の制度等を十分に理解し実践できるように教育する義務を負う。
〔勤労の権利と義務、勤労条件の基準及び児童酷使の禁止及び安全配慮義務〕
第32条①すべて国民は、勤労の権利を有し、義務を負う。
②-1 賃金、就業時間、休息その他の勤労条件に関する基準は、法律でこれを定める。
②-2 就業時間は週40時間を原則とし、勤労条件についても、同一労働同一賃金を原則としなければならない。
③ 何人も児童を酷使してはならない。
④ 何人も勤労時において、人格を侵害されず、心身を損なわれない権利を有する。また、全ての使用者は、労務を提供する全ての者にたいして安全で安心に労務提供できるよう環境を整備する義務を負う。
〔勤労者の団結権及び団体行動権〕
第33条勤労者の団結する権利及び団体交渉その他の団体行動をする権利は、これを保障する。
〔財産権〕
第34条①財産権は、これを侵してはならない。
② 財産権の内容は、公共の福祉に適合するやうに、法律でこれを定める。
③私有財産は、正当な補償の下に、これを公共のために用ひることができる。但し、自衛権に関わる私有財産の使用は、強制してはならず、財産所有者自らの申し出によって、防衛委員会の承認を得なければならない。
④前項但書において、防衛委員会の承認に疑義がある場合は、財産所有者若しくは当該財産の存ずる地方自治体の議員若しくは、国会議員は承認の取り消しの訴訟を憲法裁判所に提訴することが出来る。尚、これらの議員による提訴は、財産所有者の同意が無くてもできるものとする。
〔納税の義務〕
第35条国民と地方自治体の住民は、この憲法と法律の定めるところにより、納税の義務を負う。
〔生命及び自由の保障と科刑の制約〕
第36条何人も、法律の定める手続によらなければ、その生命若しくは自由を奪はれ、又はその他の刑罰を科せられない。
〔裁判を受ける権利〕
第37条何人も、裁判所において裁判を受ける権利を奪はれない。
〔逮捕の制約〕
第38条何人も、現行犯として逮捕される場合を除いては、権限を有する司法官憲が発し、且つ理由となっている犯罪を明示する令状によらなければ、逮捕されない。
〔抑留及び拘禁の制約〕
第39条何人も、理由を直ちに告げられ、且つ、直ちに弁護人に依頼する権利を与へられなければ、抑留又は拘禁されない。又、何人も、正当な理由がなければ、拘禁されず、要求があれば、その理由は、直ちに本人及びその弁護人の出席する公開の法廷で示されなければならない。
〔侵入、捜索及び押収の制約〕
第40条①何人も、その住居、書類及び所持品について、侵入、捜索及び押収を受けることのない権利は、第39条の場合を除いては、正当な理由に基いて発せられ、且つ捜索する場所及び押収する物を明示する令状がなければ、侵されない。
② 捜索又は押収は、権限を有する司法官憲が発する各別の令状により、これを行ふ。
〔拷問及び残虐な刑罰の禁止〕
第41条公務員による拷問及び残虐な刑罰は、絶対にこれを禁ずる。
〔刑事被告人の権利〕
第42条①すべて刑事事件においては、被告人は、公平な裁判所の迅速な公開裁判を受ける権利を有する。
② 刑事被告人は、すべての証人に対して審問する機会を充分に与へられ、又、公費で自己のために強制的手続により証人を求める権利を有する。
③ 刑事被告人は、いかなる場合にも、資格を有する弁護人を依頼することができる。被告人が自らこれを依頼することができないときは、国でこれを附する。
〔自白強要の禁止と自白の証拠能力の限界〕
第43条①何人も、自己に不利益な供述を強要されない。
② 強制、拷問若しくは脅迫による自白又は不当に長く抑留若しくは拘禁された後の自白は、これを証拠とすることができない。
③ 何人も、自己に不利益な唯一の証拠が本人の自白である場合には、有罪とされ、又は刑罰を科せられない。
〔遡及処罰、二重処罰等の禁止〕
第44条何人も、実行の時に適法であつた行為又は既に無罪とされた行為については、刑事上の責任を問はれない。又、同一の犯罪について、重ねて刑事上の責任を問はれない。
〔刑事補償〕
第45条何人も、抑留又は拘禁された後、無罪の裁判を受けたときは、法律の定めるところにより、国にその補償を求めることができる。
第4章 国会
〔国会の地位〕
第46条 ①-1国民はその主権を行使するために、国会に国権の最高機関としての地位を与える。また、国会は国の唯一の立法機関である。
①-2 行政権は自衛権においては、国会に属する。
②前項の2の規定は、参議院の専属事項とし、自衛隊への指揮監督権は参議院議員で構成された防衛委員会に属する
〔二院制〕
第47条国会は、衆議院及び参議院の両議院でこれを構成する。
〔両議院の組織〕
第48条①両議院は、成人した国民によって選挙された議員でこれを組織する。
②両議院の議員は全国民を代表するのであって、一部の国民を代表するのではない。
② 両議院の議員の定数は、法律でこれを定める。
〔議員及び選挙人の資格〕
第49条両議院の議員及びその選挙人の資格は、法律でこれを定める。但し、人種、信条、性別、社会的身分、門地、教育、財産又は収入によつて差別してはならない。
〔衆議院議員の任期〕
第50条衆議院議員の任期は、四年とする。但し、衆議院解散の場合には、その期間満了前に終了する。
〔参議院議員の任期〕
第51条参議院議員の任期は、六年とし、三年ごとに議員の半数を改選する。
〔議員の選挙〕
第52条選挙区、投票の方法その他両議院の議員の選挙に関する事項は、法律でこれを定める。
〔両議院議員相互兼職の禁止〕
第53条何人も、同時に両議院の議員たることはできない。
〔議員の歳費〕
第54条両議院の議員は、法律の定めるところにより、国庫から相当額の歳費を受ける。
〔議員の不逮捕特権〕
第55条両議院の議員は、法律の定める場合を除いては、国会の会期中逮捕されず、会期前に逮捕された議員は、その議院の要求があれば、会期中これを釈放しなければならない。
〔議員の発言表決の無答責〕
第56条両議院の議員は、議院で行つた演説、討論又は表決について、院外で責任を問はれない。
〔常会〕
第57条国会の常会は、毎年一回これを召集する。
〔臨時会〕
第58条①内閣は、国会の臨時会の召集を決定することができる。
②いづれかの議院の総議員の四分の一以上の要求があれば、衆議院議長と参議院議長は、臨時会の召集を決定しなければならない。
〔総選挙、特別会及び緊急集会〕
第59条①衆議院が解散されたときは、解散の日から四十日以内に、衆議院議員の総選挙を行ひ、その選挙の日から三十日以内に、国会を召集しなければならない。
② 衆議院が解散されたときは、参議院は、同時に閉会となる。但し、内閣は、国に緊急の必要があるときは、参議院の緊急集会を求めることができる。
③ 前項但書の緊急集会において採られた措置は、臨時のものであって、次の国会開会の後十日以内に、衆議院の同意がない場合には、その効力を失ふ。
④ 衆議院が解散している最中に緊急防衛事態が生じたときは、防衛委員長は速やかに防衛委員会を招集しなければならない。
〔資格争訟〕
第60条両議院は、各々その議員の資格に関する争訟を裁判する。但し、議員の議席を失はせるには、出席議員の三分の二以上の多数による議決を必要とする。
〔議事の定足数と過半数議決〕
第61条両議院は、各々その総議員の三分の一以上の出席がなければ、議事を開き議決することができない。
2 両議院の議事は、この憲法に特別の定のある場合を除いては、出席議員の過半数でこれを決し、可否同数のときは、議長の決するところによる。
〔会議の公開と会議録〕
第62条①両議院の会議は、公開とする。秘密会は一切認めない。
② 両議院は、各々その会議の記録を保存し、これを公表し、且つ一般に頒布しなければならない。国会議員の議院の発言は一切、記録から削除してはならない。
③ 各議員の表決は、必ずこれを会議録に記載しなければならない。
〔役員の選任及び議院の自律権〕
第63条①両議院は、各々その議長その他の役員を選任する。
②両議院の議長は、立法府の長として、各議院の自律権の責任を負う。
③ 両議院は、各々その会議その他の手続及び内部の規律に関する規則を定め、又、院内の秩序をみだした議員を懲罰することができる。但し、議員を除名するには、出席議員の三分の二以上の多数による議決を必要とする。
〔法律案提出権及び予算案提出権〕
第64条①両議院の議員は、5名以上の議員の同意をもって、所属する議院に法律案を提出し、審議させることができる。また、予算案については、20名以上の衆議院議員の同意をもって、衆議院に提出することができる。
②内閣は、衆議院に対してのみ法律案提出権をもつ。但し、自衛権及び自衛隊に関する法律案提出権を内閣は有さない。
③自衛権及び自衛隊に関する法律案提出権又は予算案提出権は参議院議員と防衛委員会のみが有する。また、参議院議員が本項の予算案を提出する場合は、20名以上の参議院議員の同意がなければならない。
③両議院に提出された法律案と予算案は、誠実に審議されなければならない。
〔法律の成立〕
第65条①法律案は、この憲法に特別の定のある場合を除いては、両議院で可決したとき法律となる。
②衆議院で可決し、参議院でこれと異なつた議決をした法律案は、衆議院で出席議員の三分の二以上の多数で再び可決したときは、法律となる。
③前項の規定は、法律の定めるところにより、衆議院が、両議院の協議会を開くことを求めることを妨げない。
④参議院が、衆議院の可決した法律案を受け取った後、国会休会中の期間を除いて六十日以内に、議決しないときは、衆議院は、参議院がその法律案を否決したものとみなすことができる。
⑤法律には、衆議院議員と参議院議員が署名し、内閣総理大臣が連署することを必要とする。
〔衆議院の予算先議権及び予算の議決〕
第66条①予算は、さきに衆議院に提出しなければならない。
② 予算について、参議院で衆議院と異なつた議決をした場合に、法律の定めるところにより、両議院の協議会を開いても意見が一致しないとき、又は参議院が、衆議院の可決した予算を受け取った後、国会休会中の期間を除いて三十日以内に、議決しないときは、衆議院の議決を国会の議決とする。
③自衛権及び自衛隊に関する予算の議決についても、前項と同じとする。
〔条約締結の承認〕
第67条条約の締結に必要な国会の承認については、前条第二項の規定を準用する。
〔議員の国政調査権〕
第68条①国会議員は、国政に関する調査のために、国の機関や公共機関に対しても記録の提出を要求することができる。本条による調査権のために記録の提出を要求されたときは、拒むことができない。
②前項によって、国会議員が収集した記録は、所属する議院を通じて全て開示しなければならない。但し、個人情報や民間の法人の機密に関わる部分については、所属する議院の判断により非開示としなければならない。また、非開示とされないことによって蒙った損害は、国会に対して請求することができる。
〔議院の国政調査権〕
第69条①両議院は、各々国政に関する調査を行ひ、これに関して、証人の出頭及び証言並びに記録の提出を要求することができる。本条による調査権のために証人の出頭及び証言並びに記録の提出を要求されたときは、拒むことができない。
②前項によって、両議院が各々収集した記録は、全て開示しなければならない。但し、個人情報や民間の法人の機密に関わる部分については、各々の議院の判断により、非開示とすることができる。また、非開示とされないことによって蒙った損害は、国会に対して請求することができる。
〔国務大臣の出席〕
第70条内閣総理大臣その他の国務大臣は、両議院の一に議席を有すると有しないとにかかはらず、何時でも議案について発言するため議院に出席することができる。又、答弁又は説明のため出席を求められたときは、出席しなければならない。
〔弾劾裁判所〕
第71条①国会は、罷免の訴追を受けた裁判官を裁判するため、両議院の議員で組織する弾劾裁判所を設ける。
②弾劾に関する事項は、法律でこれを定める。
〔国会議員の抽象的違憲法令審査提訴権〕
第72条 国会議員は、条例を除く一切の法律、命令、規則又は処分が憲法に抵触しているおそれがあるときは、具体的紛争の有無に関わらず、最高裁判所に違憲法令審査の裁判を提訴することができる。
第5章 防衛委員会と緊急事態
5章の1 防衛委員会
〔防衛委員会の設置〕
第73条①参議院は、第46条2項により、第10条3項但書に定める防衛委員会を設置する。
②自衛隊は、防衛委員長を最高責任者として防衛委員会が指揮監督権を有する。
〔防衛委員長の選出〕
第74条防衛委員長は、参議院議員の中から、参議院の指名によって選出される。
〔防衛委員会の構成の均等〕
第75条①防衛委員会は、参議院議員によって構成される。但し、現在・過去を問わず自衛隊に籍を置く経歴のものは、防衛委員になることはできない。
②防衛委員は、参議院に議席を有する政党若しくは会派の推薦した参議院議員が就任する。また防衛委員会の構成は、参議院での保有議席数に関わらず、政党若しくは会派が均等になるようにしなければならない。
〔全会一致の原則〕
第76条防衛委員会の議決若しくはその他意思決定は、この憲法の定めがある場合を除いて、全会一致でなければならない。
〔防衛委員会の職務〕
第77条防衛委員会は以下のことを行う。
一 緊急防衛事態における、自衛権の行使と自衛隊への指揮監督。
一 参議院における一委員会としての自衛権及び自衛隊に関する予算案及び法律案の審議
一 内閣が締結した条約その他国際法規の内、自衛権及び自衛隊にかかる項目に関する審議
一 自衛隊の行政事務
一 自衛権及び自衛隊に関する政令の制定 但し、法律の委任がある場合を除いては、罰則を設けることができない。
〔防衛委員及び防衛委員長の罷免権〕
第78条①参議院は総議員の過半数の賛成をもって、防衛委員を罷免することができる。但し、参議院において総議員の3分の1以上の議席を保有していない政党若しくは会派に属している防衛委員の罷免に関しては、罷免を要求されている者を除く防衛委員会の全会一致の賛成を必要とする。
②参議院は総議員の過半数の賛成をもって防衛委員長を罷免することができる。但し、罷免が可決した場合、新たな防衛委員長の指名をどの議案よりも優先させなければならない。
〔予算案の提出〕
第79条 ①防衛委員会は、自衛権及び自衛隊に関する予算案を作成し、防衛委員長の権限により、衆議院に提出する。提出時に全会一致を必要としない。
②前項により提出された予算案が衆議院で可決され、参議院に送付され、防衛委員会で審議されるときは、その議決は全会一致でなければならない。
③119条2項及び120条2項の国会の承認が得られなかった場合は、10条3項の「必要最低限」を満たさなかったとみなし、防衛委員会と防衛委員は、その翌年度に限り予算案提出権を失う。
〔憲法解釈〕
第80条 防衛委員会は、第2章の1に関わる憲法解釈又は憲法解釈の変更を行うときは、全会一致で発議し、国会の承認を得なければならない。
〔内閣が締結した国際法規の否認権〕
第81条①内閣が批准した条約や国際法規又はその一部で、第2章の1に関わる部分は、防衛委員会による全会一致の承認が無ければ、その効力は発しない。
②内閣が批准する前の条約や国際法規は、第2章の1に関わる部分について、防衛委員会の全会一致の承認が得られない場合、内閣は批准することができない。
5章の2 緊急事態
〔緊急事態の定義と自衛権の行使〕
第82条①わが国の領土・領海・領空が武力行使によって攻撃された場合は、緊急防衛事態として、自衛権を行使することができる。但し、切迫した状況において武力行使による攻撃がなされていない場合においては、わが国から武力による攻撃を行ってはならない。テロ行為においても同様とする。
②わが国の領土・領海・領空において、甚大なる災害等が発生したときは、緊急保全事態として、日本国内の全ての人間の安全を確保する為に、自衛隊を出動させることが出来る。
〔緊急防衛事態の発生と解除〕
第83条 ①緊急防衛事態の発生により、自衛権を行使せざるを得ない場合の自衛隊への指揮監督権は、主権の存する国民の選挙によって議員が構成された参議院の付託により、防衛委員長を最高指揮官とした防衛委員会が有する。また、第82条1項但書の状況においても防衛委員長は自衛隊を発動させることが出来る。
②緊急防衛事態の発生は防衛委員長が確認を行い、防衛委員会の過半数の議決によって、緊急防衛事態の存在についての国際法上の宣言を行う。
③国際法上の宣言がなされるまで、若しくは、防衛委員会の招集が困難な場合は、自衛隊への指揮監督権は防衛委員長が有する。
④緊急防衛事態の解除については、わが国の領域への武力攻撃が止み、切迫した脅威が取り除かれたときに、防衛委員会によって公布する
⑤-1 防衛委員長又は防衛委員会又は自衛隊が、第9条又は第10条1項と2項が許容する範囲を逸脱し、違憲な自衛権若しくは事実上の交戦権を行使しようとした場合は、最高裁判所は独立した権限をもって、緊急防衛事態の解除の公布を防衛委員長と防衛委員会に命令することが出来る。この命令に対して、防衛委員会・防衛委員長・内閣・その他公権力は従わなければならない。
⑤-2 防衛委員長又は防衛委員会又は自衛隊が、第9条又は第10条1項と2項が許容する範囲を逸脱し、違憲な自衛権の行使若しくは事実上の交戦権の行使を行おうとした場合は、衆議院は過半数以上の賛成をもって、緊急防衛事態の解除の公布を防衛委員長と防衛委員会に命令することが出来る。この命令に対して、防衛委員会・防衛委員長・内閣・その他公権力は従わなければならない。但し、本項の1の命令が出されたときは、それを優先する。
〔内閣による緊急防衛事態の外交解決努力義務と防衛委員会への協力〕
第84条①内閣は緊急防衛事態の確認が行われた時から、外交その他の手段によって、国際社会による解決の努力を最大限にしなければならない。
②緊急防衛事態時において、内閣は法律が定めるところにより、防衛委員会に協力しなければならない。
〔緊急保全事態の発生と内閣による自衛隊への出動命令〕
第85条 内閣は緊急保全事態が発生したときには、法律の定めるところにより、防衛委員長の承認を得て自衛隊の出動を命じることができる。但し、この場合においても、自衛隊への指揮監督権は防衛委員会が有する。
第6章 内閣
〔行政権の帰属〕
第86条行政権は、内閣に属する。但し、自衛権に関する行政権は除く。
〔交戦権・自衛権に関する憲法解釈の禁止〕
第87条 内閣は第2章に関わる憲法解釈をいっさい行ってはならない。
〔内閣の組織と責任〕
第88条内閣は、法律の定めるところにより、その首長たる内閣総理大臣及びその他の国務大臣でこれを組織する。
2 内閣総理大臣その他の国務大臣は、文民でなければならない。
3 内閣は、行政権の行使について、国会に対し連帯して責任を負う。
〔内閣総理大臣の指名〕
第89条①内閣総理大臣は、国会議員の中から国会の議決で、これを指名する。この指名は、他のすべての案件に先だつて、これを行ふ。
② 衆議院と参議院とが異なつた指名の議決をした場合に、法律の定めるところにより、両議院の協議会を開いても意見が一致しないとき、又は衆議院が指名の議決をした後、国会休会中の期間を除いて十日以内に、参議院が、指名の議決をしないときは、衆議院の議決を国会の議決とする。
〔国務大臣の任免〕
第90条内閣総理大臣は、国務大臣を任命する。但し、その過半数は、国会議員の中から選ばれなければならない。
2 内閣総理大臣は、任意に国務大臣を罷免することができる。
〔不信任決議と解散又は総辞職〕
第91条①内閣は、衆議院で不信任の決議案を可決し、又は信任の決議案を否決したときは、十日以内に衆議院が解散されない限り、総辞職をしなければならない。
②内閣は、参議院で不信任の決議案を可決し、又は信任の決議案を否決したときは、総辞職をしなければならない。
〔内閣総理大臣の欠缺又は総選挙施行による総辞職〕
第92条内閣総理大臣が欠けたとき、又は衆議院議員総選挙の後に初めて国会の召集があつたときは、内閣は、総辞職をしなければならない。
〔総辞職後の職務続行〕
第93条前二条の場合には、内閣は、あらたに内閣総理大臣が任命されるまで引き続きその職務を行ふ。
〔内閣総理大臣の職務権限〕
第94条内閣総理大臣は、内閣を代表して議案を国会に提出し、一般国務及び外交関係について国会に報告し、並びに行政各部を指揮監督する。
〔内閣の職務権限〕
第95条内閣は、他の一般行政事務の外、左の事務を行ふ。
- 一 法律を誠実に執行し、国務を総理すること。
- 二 外交関係を処理すること。
- 三 条約を締結すること。但し、事前に、時宜によつては事後に、国会の承認を経ることを必要とする。
- 四 法律の定める基準に従ひ、官吏に関する事務を掌理すること。
- 五 予算を作成して国会に提出すること。
- 六 この憲法及び法律の規定を実施するために、政令を制定すること。但し、政令には、特にその法律の委任がある場合を除いては、罰則を設けることができない。
〔政令への署名と連署〕※法律を抜いた。法律の署名と連署は65条5項へ。
第96条政令には、すべて主任の国務大臣が署名し、内閣総理大臣が連署することを必要とする。
〔国務大臣訴追の制約〕
第97条国務大臣は、その在任中、内閣総理大臣の同意がなければ、訴追されない。但し、これがため、訴追の権利は、害されない。
第7章 司法と違憲法令審査
第7章の1 司法
〔司法権の機関と裁判官の職務上の独立〕
第98条①すべて司法権は、最高裁判所及び法律の定めるところにより設置する下級裁判所に属する。
② 特別裁判所は、憲法が定める以外、これを設置することができない。行政機関は、終審として裁判を行ふことができない。
③ すべて裁判官は、その良心に従ひ独立してその職権を行ひ、この憲法及び法律にのみ拘束される。
〔最高裁判所の規則制定権〕
第99条①最高裁判所は、訴訟に関する手続、弁護士、裁判所の内部規律及び司法事務処理に関する事項について、規則を定める権限を有する。
② 検察官は、最高裁判所の定める規則に従はなければならない。
③ 最高裁判所は、下級裁判所に関する規則を定める権限を、下級裁判所に委任することができる。
〔裁判官の身分の保障〕
第100条裁判官は、裁判により、心身の故障のために職務を執ることができないと決定された場合を除いては、公の弾劾によらなければ罷免されない。裁判官の懲戒処分は、行政機関がこれを行ふことはできない。
〔最高裁判所の構成及び裁判官任命の国民審査〕
第101条①最高裁判所は、その長たる裁判官及び法律の定める員数のその他の裁判官でこれを構成し、その長たる裁判官以外の裁判官は、内閣でこれを任命する。
② 最高裁判所の裁判官の任命は、その任命後初めて行はれる衆議院議員総選挙の際国民の審査に付し、その後十年を経過した後初めて行はれる衆議院議員総選挙の際更に審査に付し、その後も同様とする。
〔裁判官の身分の保障〕
第102条裁判官は、裁判により、心身の故障のために職務を執ることができないと決定された場合を除いては、公の弾劾によらなければ罷免されない。裁判官の懲戒処分は、行政機関がこれを行ふことはできない。
〔最高裁判所の構成及び裁判官任命の国民審査〕
第103条①最高裁判所は、その長たる裁判官及び法律の定める員数のその他の裁判官でこれを構成し、その長たる裁判官以外の裁判官は、内閣でこれを任命する。
② 最高裁判所の裁判官の任命は、その任命後初めて行はれる衆議院議員総選挙の際国民の審査に付し、その後十年を経過した後初めて行はれる衆議院議員総選挙の際更に審査に付し、その後も同様とする。
③ 前項の場合において、投票者の多数が裁判官の罷免を可とするときは、その裁判官は、罷免される
④ 審査に関する事項は、法律でこれを定める。
⑤ 最高裁判所の裁判官は、法律の定める年齢に達した時に退官する。
⑥ 最高裁判所の裁判官は、すべて定期に相当額の報酬を受ける。この報酬は、在任中、これを減額することができない。
〔下級裁判所の裁判官〕
第104条①下級裁判所の裁判官は、最高裁判所の指名した者の名簿によつて、内閣でこれを任命する。その裁判官は、任期を十年とし、再任されることができる。但し、法律の定める年齢に達した時には退官する。
② 下級裁判所の裁判官は、すべて定期に相当額の報酬を受ける。この報酬は、在任中、これを減額することができない。
〔対審及び判決の公開〕
第105条①裁判の対審及び判決は、公開法廷でこれを行ふ。
② 裁判所が、裁判官の全員一致で、公の秩序又は善良の風俗を害する虞があると決した場合には、対審は、公開しないでこれを行ふことができる。但し、政治犯罪、出版に関する犯罪又はこの憲法第三章で保障する国民の権利が問題となつてゐる事件の対審は、常にこれを公開しなければならない。
第7章の2 違憲法令審査権
〔最高裁判所の法令審査権と憲法裁判所の設置・構成〕
第106条①最高裁判所は、一切の法律、命令、規則又は処分が憲法に適合するかしないかを決定する権限を有する終審裁判所である。
②-1最高裁判所が憲法裁判所を設置する場合は、その裁判官のうち、4分の1は衆議院、4分の1は参議院が推薦した者で構成しなくてはならない。
②-2 第107条3項に基づき下級裁判所において憲法裁判所を設置する場合は、その裁判官団を5名以上で構成し、そのうち、5分の1以上を提訴した議員が属する地方自治体の議会が推薦したもので構成しなくてはならない。
〔抽象的違憲法令審査〕
第107条①最高裁判所は、第72条により国会議員が違憲法令審査の提訴を行ったときは、法律の定めるところにより憲法裁判所を設置し、憲法に適合するかしないかの判断をしなくてはならない。
②最高裁判所は、第34条4項に基づき、参議院議員が自衛権に関わる私有財産の使用の承認の取り消しを求めたときは、法律の定めるところにより憲法裁判所を設置し、審議と取り消しの可否の判断をしなくてはならない。
③最高裁判所は、第126条に基づき、地方自治体の議員が条例の違憲審査の提訴を行った場合は、法律の定めるところにより、初審として下級裁判所に憲法裁判所を設置し、憲法に適合するかしないかの判断をしなくてはならない。この場合、終審は最高裁判所としなくてはならない。
〔具体的違憲法令審査〕
第108条 何人も裁判を提訴したときに、関連する一切の法律、命令、規則又は処分若しくは条例が憲法に適合するかしないかを判断するよう申し立てることができる。この申立があった時、裁判所は法律の定めるところにより、違憲かどうかの判断をしなくてはならない。
〔裁判所の違憲判断の効力〕
第109条 裁判所が違憲の判断を行った場合、公権力と該当する法令は拘束される。
〔交戦権・自衛権に関する最高裁判所独自の違憲法令審査権〕
第110条①最高裁判所は提訴の有無に関わらず、独自に第10条及び第11条に関わる一切の法律、命令、規則又は処分が憲法に適合するかしないかの判断を行うことが出来る。
②日本国民は、83条5項若しくは前項に関して、法律の定めるところにより、最高裁判所に命令若しくは判断を下すよう、請願することができる。
第8章 財政
〔財政処理の要件〕
第111条国の財政を処理する権限は、国会の議決に基いて、これを行使しなければならない。
〔課税の要件〕
第112条あらたに租税を課し、又は現行の租税を変更するには、法律又は法律の定める条件によることを必要とする。
〔国費支出及び債務負担の要件〕
第113条①国費を支出し、又は国が債務を負担するには、国会の議決に基くことを必要とする。
〔予算の作成〕
第114条内閣は、毎会計年度の予算を作成し、国会に提出して、その審議を受け議決を経なければならない。
〔予備費〕
第115条①予見し難い予算の不足に充てるため、国会の議決に基いて予備費を設け、内閣の責任でこれを支出することができる。
②緊急防衛事態の発生による予見し難い予算の不足に充てるため、国会の議決に基いて予備費を設け、防衛委員会の責任でこれを支出することができる。
③ すべて予備費の支出については、事後に国会の承諾を得なければならない。
〔皇室財産及び皇室費用〕
第116条すべて皇室財産は、国に属する。すべて皇室の費用は、予算に計上して国会の議決を経たうえで、内閣が責任をもって執行しなければならない。
〔公の財産の用途制限〕
第117条公金その他の公の財産は、宗教上の組織若しくは団体の使用、便益若しくは維持のため、又は公の支配に属しない慈善、教育若しくは博愛の事業に対し、これを支出し、又はその利用に供してはならない。
〔会計検査〕
第118条①国の収入支出の決算は、すべて毎年会計検査院がこれを検査し、内閣は、次の年度に、その検査報告とともに、これを国会に提出しなければならない。
②自衛隊の収入支出の決算は、すべて毎年防衛会計検査院がこれを検査し、防衛委員会は、次の年度にその検査報告とともにこれを国会に提出し、国会の承認を得なければならない。
③ 会計検査院及び防衛会計検査院の組織及び権限は、法律でこれを定める。
〔財政状況の報告〕
第119条①内閣は、国会及び国民に対し、定期に、少くとも毎年一回、国の財政状況について報告しなければならない。
②防衛委員会は、国会及び国民に対し、定期に、少なくとも毎年一回、自衛隊の財政状況について報告し、国会の承認を得なければならない。
第九章 地方自治
〔地方自治の本旨〕
第120条①この憲法は、日本国民に主権が存する根幹として、自律して地域住民が居住する地域の自治を行うことを保障する。国や国の機関はこれを妨げることは出来ない。
②地方自治体は、その財産を管理し、事務を処理し、及び行政を執行する権能を有する。
〔地方自治体の機関と首長・議員の選挙〕
第121条①地方自治体は、法律の定めるところにより、その議事機関として議会を設置する。
② 地方自治体の首長、その議会の議員及び法律の定めるその他の吏員は、その地方自治体の住民が、直接これを選挙する。
③地方自治体の首長と地方自治体の議会の議員の選挙権は、住民としての地位を持つ外国人に対しても付与される。
〔地方自治体の財源の確保〕
第122条①地方自治体は、その財源を確保する為、条例又は条例の定める条件によって、独自に租税を課すことができる。
②前項において、法律又は法律の定める条件によって課された租税と重複する場合は、前項による租税が優先される。この場合、二重に課税してはならない。
③地方自治体は、地域の産業の興隆や公共サービスの充実を目的として、営利事業を営むことが出来る。但し、その予算と決算は議会の承認を得なければならない。
〔地方自治体の条例制定権〕
第123条①地方自治体は、議会の議決をもって、条例を定めることが出来る。
②条例は、その地方自治体の地域内と住民に対して、法律と同様の効力をもつ。但し、その内容が法律に抵触する場合は、法律の効力が優先される。
〔地方自治体の組織と運営及び権能〕
第124条地方自治体の組織及び運営に関する事項は、地方自治の本旨とこの憲法の定めに基いて、法律でこれを定める。但し、条例においても地方自治体の組織及び運営に関する事項を定めることができる。
②地方自治体は、その財産を管理し、事務を処理し、及び行政を執行する権能を有する。
〔特定の地方自治体のみに適用される特別法〕
第125条特定の地方自治体のみに適用される特別法は、法律の定めるところにより、その地方自治体の住民の投票においてその過半数の同意を得なければ、国会は、これを制定することができない。
〔違憲条例審査提訴権〕
第126条 地方自治体の議員は、属する地方自治体の条例が憲法に抵触している恐れがあるときは、具体的紛争の有無に関わらず、法律の定めるところにより、管轄する下級裁判所に違憲条例審査の提訴をすることができる。
第9章 改正
〔憲法改正の発議、国民投票及び公布〕
第127条①この憲法の改正は、各議院の総議員の三分の二以上の賛成で、国会がこれを発議し、国民に提案してその承認を経なければならない。この承認には、特別の国民投票又は国会の定める選挙の際行はれる投票において、その過半数の賛成を必要とする。
②憲法改正について前項の承認を経たときは、天皇は、国民の名で、この憲法と一体を成すものとして、直ちにこれを公布する。
第10章 最高法規
〔基本的人権の由来特質〕
第128条この憲法が日本国民に保障する基本的人権、そして戦争放棄、平和主義は、人類の多年にわたる自由獲得の努力の成果であって、これらの権利は、過去幾多の試錬に堪へ、現在及び将来の国民に対し、侵すことのできない永久の権利として信託されたものである。
〔憲法の最高性と条約及び国際法規の遵守〕
第129条この憲法は、国の最高法規であって、その条規に反する法律、命令、詔勅及び国務に関するその他の行為の全部又は一部は、その効力を有しない。
2 日本国が締結した条約及び確立された国際法規は、これを誠実に遵守する
〔憲法尊重擁護発展の義務〕
第130条天皇又は摂政及び国務大臣、国会議員、裁判官その他の公務員は、この憲法を尊重し擁護する義務を負う。また、日本国民はこの憲法を遵守しつつ、発展させる義務を負う。
この憲法改正案はどこを改正しているのか?
この憲法改正案がどこを改正しているのか、わかりやすいように、以下、改正案のPDF(を画像化したもの)を示します。青字が今の日本国憲法の部分であり、赤字が改正部分です。
改正案の骨子・要旨はこちら
改正案の原文だけではわからないことも多いと思います。
改正の骨子は、こちらを見ていただければと思います。